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「あっ、ほっ、ほらあ! やっぱりじゃないですかあ!」
「やっぱりって言うなあ! いいから協力してよ!」
とうとう、僕たちはホテルの門をくぐってしまった。
自動ドアが背後で閉まり、目の前には、大きな液晶画面に色とりどりの部屋の紹介が流れている。
その先で、エレベーターのドアが閉まるのが見えた。
「ふん、ちらっと見えたわ。あいつら501号室ね。隣は、よし空いてるな。502、と」
彼女はタッチパネルを手早く操作して、出てきた鍵を受け取ると、また僕を引っ張っていった。
「いいわ……現行犯で捕まえてやる。言い訳無用の状態で」
「あの」
「なによ」
「僕は、東条洋二といいます。高校二年生です」
「ああ、ごめん。真崎。真崎京香。高二」
「真崎さんか……忘れないようにしないと」
「なんで。別に必要ないでしょ」
「え、でも僕にとっては生涯の記念日ですし」
「……今、あんた、凄く気色悪いこと考えてるでしょ」
「失礼な。むしろ偉いじゃないですか。死ぬまであなたの顔と名前は忘れません」
「ああもう、そんな場合じゃない! 幸いこのホテル、壁はそんなに厚くないみたいね。チッ、女連れ込むならもっといいとこ選べよ。そういうとこだぞ」
そう言うが早いか、真崎さんは、僕のことなど見向きもしなくなり、501号室があるほうの壁に耳を当てたのだった。
壁には、ベッドがぴたりと横づけにして置かれていた。
真崎さんは靴を脱いでベッドに座り、短いスカートから足をのぞかせて、無防備に僕に背中を向けている。
「聞こえねー。あー、聞こえねー。クソが。犯罪者が。この世から変態は一人残らず消してやる。手始めにこのエロオヤジからだ」
完全に放置されてしまった僕は、仕方なく、シャワーでも浴びようかと思って服を脱いだ。
あっという間にパンツ一丁になる。
黒いコートはハンガーにかけてラックに吊るし、服はたたんでソファに置いた。
しかしふと見ると、真崎さんが、禁断の秘術によって生命を得た生ゴミを見るような目で僕を睨みつけていた。
「……真崎さん、なにか?」
「……服を着ろ」
「え、でも」
「でもって言うな。着ろ。着ないと、隣のクソオヤジの前に、お前が通報されることになる」
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