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 冷え込む夜のエブリスタウンの繁華街を、多くの人々が行き交う。様々な店舗から(あふ)れる照明の光や街灯で道は明るく、屋外放送も賑々(にぎにぎ)しい。道路の交通量も多く、特に駅近くの道では、送迎の車がひっきりなしだ。 (何でだろう。いつもはもっと静かで――そうか。時間だ)  この街に引越して約三カ月。その(かん)ずっと繁忙期だった茉莉(まつり)は、出社すれば帰りは深夜、テレワークの日や休日は自宅に()もるか、徒歩二分のコンビニにしか行かないような生活を送っていたのだ。  そんな彼女にとって、一八時を過ぎたばかりの街は、違和感を覚える華やかさだった。  折角だし、このまま今夜は少し街をぶらつこうか。そう思った矢先、一軒の店が茉莉の目にとまった。  壁面看板がなく、遠目では何の店か分からない。濃い色の木目と白壁のサイディングがお洒落だ。和カフェだろうか。  ところが近づいてみると、開放された引違い戸や窓から伺える店内は、茉莉の予想と大きく違っていた。  並ぶのは、様々なショーケース。それを挟んで客と談笑したり、手元から視線を外さず何やら作業をしたりする店員達の格好は、調理白衣に白帽子だ。  戸口の水引暖簾(みずひきのれん)に視線を移す。青地に広がる、薄灰色の流水紋。その右端には、同じく薄灰色で染め抜かれた屋号「鮮魚 竜宮屋(りゅうぐうや)」の文字があった。  ここは、魚屋だ。
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