特別公開

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早く、早く殺せ。 僕のセカイのオトシゴとしての本能がそう告げる。 迫ってきている。 大量の魔物たちが近づいている。 目を見…れない。 怖いんだ… どうして! 僕が見ないと大切な人が死んでしまうのに! なんでなんでなんでなんで! どうして殺せないの! 「スイ…大丈夫。君には傷の一つつけさせないから。」 内心パニックになっている僕をルイが励ましてくれる。 ルイはこんなに僕のことを支えてくれるのに… 守ってもらってばっかりじゃだめ!! がんばるの! 魔物たちはすぐ近くまで迫っていた。 僕は少しずつ目を合わせ 魔物たちを殺していった。 僕のお腹には暖かいルイの腕が乗っている。 この暖かさがあるから僕は頑張れる。 殺しても殺しても 魔物は湧いてくる。。 ふとなにかの声が聞こえた。 『そろそろ――』 聞き取ろうとした瞬間、僕の足に鎖が巻き付いた。 「ひゃっ!」 足がものすごい力で引っ張られる。 僕が馬からずれ落ちそうになったところをルイが必死に掴んで止めてくれた。 …時間が、来たんだ。 僕は元々、この壊れてしまった世界を正すために、セカイに産み落とされた。 これで、全部元に戻るんだ。 でも、嫌だ。 我儘を言ってはいけない。 そんなことはわかっている。 これでルイも戦わなくて良くなる。 わかってる。わかってるよ…! 「ルイっ…」 「ぐっ…」 ガクンッと手が解けた。 「あっ―」 あっという間に僕は地面に引きずりこまれてしまう。 ルイが馬から飛び降りて僕の手を掴んだ。 僕はどんどん地面に沈んでいく。 「る、い。あのね、僕、ルイのこと、大好きだよ。来世は、平和な世界で、僕の、お婿さんに、なって――」 ズルっと地面に吸い込まれ、手も解けてしまった。 とおくからルイが僕を呼ぶ声が聞こえる。 あのね、本当にずっと、ずっと、だいすき。わすれないよ。 次僕が生まれるときは、きっと平和ではないけれど。
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