特別公開

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…平常心。 まずは前にある説明…みたいのを読もう。 『突然、世界に魔物が溢れた。空も真っ暗になり、太陽なんて見えやしない。たくさんの人々が混乱し、命を落とした。この時代を暗黒時代と呼ぶ。そんな中、一人の娘が地面に引きずり込まれ、死亡する。その娘がスイセイである。はじめは魔物の仕業かと恐れていた人類だったが、それからというものの、勝手に魔物たちが消えてゆき、平和な時代が訪れた。人々は、きっとスイセイがいなくなったことで平和な時代が訪れたんだ、そう考えた。暗黒時代が始まるのも、スイセイが見受けられてからだった。すべてのタイミングが合わさったことで、人々は確信した。全てはスイセイのせいだと。それからというもの、スイセイは破滅のスイセイと呼ばれるようになったのだ。』 わけが、わからない。僕はまず娘じゃない。男だ。 その上、僕がいるから暗黒時代が訪れた?笑わせないで。 逆だよ、暗黒時代が訪れたから僕が生まれてきたんだ。 抗うこともできずに大切な人を失ってまで世界を正した結果が、これなの? 僕は、なんのためにあそこまでして世界を救ったの? 僕が救った世界はこんなにもか(みにく)かったの? それなら、もっと、死ぬまでずっと、ルイと一緒に居たかったのに。 馬鹿なことをした。 こんな世界、救わなければよかった。 最後までるいと一緒に笑っていたかった。 …下にもなにか書いてある。 『奥に置いてある箱の中には、醜き破滅のスイセイの所持物であった指輪がある。なぜだか、どうしても壊れない。忌々しいスイセイの魔力が漏れ出てはいけない。そう考え、定期的に魔力を回収している。だからこれによる害はないはずだ。もし体へ以上が出た場合は、魔法局への報告を義務とする。』 ゆび、わ。 僕がルイにもらった大事な、だいじな、だいじなゆびわ… 魔力を回収… だからまた暗黒時代が訪れるんだよ。 だからまた僕が産み落とされたんだよ。 ほんと馬鹿だ。 指輪。僕の指輪。 はやく、早く取り返さないと。 「ちょっとあなた、邪魔ですわよ。今日は魔力回収の日と伝えていたでしょう。どきなさいまし。」 振り向くとそこには、金髪のお嬢様のような女が小型のキカイのようなものを持っている。 魔法具だろうか。 そんなことを考えているうちに、女は僕を押しのけて指輪が入っているショーケースを鍵で開ける。 ゆびわ! そう思った瞬間、空気が熱く、重くなる。 「うっ、、!回収が遅くなったかしら。でもいつもより早くに来たはずよ、」 「僕のゆびわ」 頭より先に体が動いていた。 「何をしている!」 後ろから鋭い声が響いてくる。 でも僕の耳にはなんにも入ってきていなくて、 指輪は僕の指にはまった。 えへへ、ルイにもらった、僕の、ぼくだけの指輪(首輪) 指がパッと光った。 「…っ!!!」 体に激痛が走る。 体のアチラコチラのパーツが足りていないように うまく体が動かない。 全身が痛い。 あぁ、そっか。 今までの「僕」はずっとこの中に入ってたんだ… それが魔力として回収されてしまったから、 また、世界が暗闇に包まれるんだ。 そんなことはどうでもいい。 体中が痛い。 でも、嬉しい。 ルイにはめてもらった首輪。 それが僕の手に帰ってきた。 驚くほどの速さで体が回復する。 さっき吸い出された魔力たちもみんな僕のもとに返ってくる。 これで、僕のすべてが帰ってきた。 ルイはいないけど…これをつけていればずっと、 ずっとルイとつながっていられる。 「えへへへ、」 「指輪を外しなさいっ!!」 さっきの…ルイスさんだ。 「えへへ、いいでしょ。僕の指輪。僕の首輪。ルイからもらった大切な、」 「それはっスイの大切な!」 「…え、」 「…あ、」 頭がうまく回らない。暑い。空気が重たい。 ルイにもらった指輪。大好きな指輪。 「…ルイ?スイ?なにか、思い出しそうで思い出せない。思い出したらいけいないような感じが、」 「ねぇ、スイって誰のこと?僕のこと?」 少しずつ完全化していく僕の魔力が少しずつ、ほんの少しずつ空気に充満していく。 息苦しさが減っていく。 静かな時間が過ぎた。静かで、静かだ。 「何をしているんだ!!バカモノ!!!!!また暗黒時代が訪れたらどうす、」 急に現れたおじいさんに頭を思いっきりひっぱたかれる。 勢いでそのまま地面に顔を衝突し、大量の鼻血が出る。 「我々が何を考えて!!!このようなことをしているのか!!!なぜ考えようとしない!!!!」 頭、ぼーっとする。 「るい…約束したのに…ルイにお婿さんになってもらうって、僕と、」 「ええい!!勝手に喋るんでない!!!!!これは、今生きている全人類に――」 「スイ?」 懐かしい声がする。 だいすきで こころがあったまる かっこよくて 温かい ルイの声が。
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