上着の左側のポケットのヒト

「はいお元気で、失礼しま～す」

『どうしたのよ、ポケットの中覗き込んで独り言なんか言っちゃったりして？』

「えっ？ああ、今のヒトのこと」

『ヒト？』

「うん、ほら俺の実家にブラウン管のテレビが置いてあるじゃん」

『ああ、あの使わなくなったやつね』

「そう、あのテレビの上に座ってたヒト」

『へぇ～、そうだったの』

「子供の頃さぁ、野球とかアニメの良いとこでザ～って映んない事とかよくあったじゃん」

『あったあったぁ、そしてテレビの横とか上を叩いてたぁ』

「それそれ！親父なんか酔っ払った時とか間違ってあのヒトの頭叩きながら、あれ？直らねぇぞぉ～っ！とか言っちゃってさ」

『お義父さんが？そんな見えな～い！』

「でね今あのヒトに聞いたんだけど、今は殆んどの家のテレビが液晶だから大変なんだって、座るのが」

『だよねぇ、薄いもん液晶は』

「あっそうだ、マヨネーズ切れてたよ」