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無造作に投げ捨てられたハンカチからは、粉々になった〝カメムシの死体〟がバラバラになって舞い散って。
あれだけ懸命に砕いたのに、足や触覚や腹の一部が壊れきれずに残されていたから。
それがやけにリアルで、ゾワリと私の背筋を冷たく凍りつかせた。
きっと、死んでカリカリに乾燥していたんだろう。
カメムシ特有のくさいニオイなんてしなかったし、変な体液もにじみ出てはいなかった。
けれど――。
私はお気に入りだったそのハンカチを、何の躊躇いもなくゴミ箱に捨てた。
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