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 ある男性が住んでいる街、しばふをきれいに刈りそろえている。雑草の一本も許さない。そんな街において男性の庭だけが例外であった。男性の家は雑草が伸びてタンポポが花を咲かせている。汚い庭を住人は快く思っていない。なんとかさせようと業者を差し向けたり、住人が押しかけてきたりするが、男性は揺るがない。屋根裏部屋で作業をつづける。ある日、住人のひとりが家のなかまで押しかけてきた。巧妙に男性の心をつかんでくる。ついつい秘密の屋根裏部屋を見せてしまった。こうなったからには作戦を実行するしかない。男性は窓を開けた。育てていたタンポポの種をばらまく。種は風に乗って雑草のない街へ広がっていく。  街のルールにひとりで立ちむかおうとしている男性の話でした。住人からすれば迷惑な存在ですが、男性なりのプライドのようなものがあったのでしょう。
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