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朝礼のため、担任と一緒に受け持ちクラスの教室へ入った。
「ほーら、席について!静かに!副担任の坂井先生が今日から復帰されます。坂井先生、一言だけお願いしますよ」
「あ、はい。あの、長い間休んでしまい、すみませんでした。遅れてしまった授業についてはどんどん質問してきてください。休み時間でも放課後でも構わないので」
僕が言い終わる前に、教室がザワザワとした。僕のことを何か言っているのだろうか?
以前は、授業と直接関係ないことを生徒を前にして話すことが苦手だった。でも今は不思議なことにすらすらと言葉が出てくる。こんなふうに変われたのは、レイラのおかげだと思う。
あ、ガンちゃんも、かな。
「先生!訊きたいことがあるんですが」
クラスでも目立つタイプの女子が、手を挙げた。何を訊かれるのかと、少々不安になるけれど。
「なんですか?」
「コレ、坂井先生ですよね?」
その女生徒はスマホの画面を見せてきた。また盗撮疑惑がどうとかの記事なんだろうか?ドキドキしながら、そのスマホ画面を見た。
そこには楽しそうに手を繋いでクレープを食べるレイラと僕が写っていた。驚いたのは、ニュースサイトの記事の一つで、『人気モデルのレイラに恋人か?』と見出しが付いていたことだ。
_____そっか、レイラは有名人なんだ
こういう時、どんな対処をすれば正解なのかレイラに聞いておくんだったと後悔した。少し考えて、当たり障りのない一般的な答えを返す。
「仲のいい友達だよ、ここのクレープが美味しいからって連れて行ってくれた時の写真だと思う」
「えーっ!マジで?」
「うっそ、虫オタクがモデルと友達?」
「付き合ってるように見えるけど」
「ってか、めっちゃ変わったよね?あの虫オタクが……」
さっきあちこちでスマホを向けられている気がしたのは、このWebニュースのせいだったのか。
「ほらほら、みんな静かに!まずは連絡事項からいくぞ」
担任が大声をあげて静粛を促すが、一度ざわついた教室はなかなか静かにはならない。
「ねぇ、坂井先生、レイラのこととかも訊いていい?」
後ろの席の男子が声を上げた。男子からは、これまで無視されることはあっても何かを質問されたことはなくて、ドキッとした。
「ただの友達だから、特に話すことなんてないけど……」
マッチングアプリのデート相手、というだけの関係だから、レイラの個人的なことは何も知らない。正直、訊かれても困る。
_____それにしても、僕に向けられる視線がこんなに変わるとは……
もう誰も僕のことを『盗撮教師だ』とか『キモい』とか言ってこない。やっとみんなに受け入れられたということかと、ホッとした。
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