友達以上、恋人未満

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そして… 「本当に何もしない?」と聞き返していた。 押しに弱い私のだ。 「行ってくれるの?」 「何もしないって約束するなら」 「分かった、何もしない」 「お金もったいないよ?」 「全然そんなの大丈夫!」 そこまでして私と「ホテルに行きたい」と言ってくれることに喜んでいいのか複雑だ。 きっと好きな子と「そういう関係」になりたいと思うのは、ごく普通のことだろう。でも私たちは付き合っている訳ではない。 体の関係だけを望んでいるのか? 何もしないと言いながら押し倒されてしまったら…。 そんな関係でもいいと割り切れるほど私は経験豊富ではない。むしろ無いに等しい。 私は20才まで男性と付き合ったことがなかった。告白してくれる人はいたが全くタイプではなく断ったことはある…程度だ。 高校時代の友達から、職場の先輩だという10才も年上の男性を紹介され、何度か会ううちに付き合うことになった。 私は初めて彼が出来たことで周りが見えないほどだった。 求められれば応えたい。それまで経験のなかった私は、怖くて恥ずかしくて何度も待ってもらった。 日に日に罪悪感が増していったある日、次に会うときは…と約束をした。 痛くて痛くて泣きながら彼を受け入れた。 彼は優しかったのに、好きより恐怖が勝ってしまった。 会いたいけど…したくない。そんな私の気持ちが伝わったのか、だんだんと彼の心は離れていった。 彼は本気で私を好きだったのだろうか?と今更ながら疑問に思うこともあるが、それは私自身にも同じことが言えるのかもしれない。本当に好きなら我慢できたのではないか…。 今は琢磨の気持ちを私に留めておきたい… 私を好きだと言葉にしてくれれば、受け入れたい…でも、そうじゃない…。 それでも琢磨を信じるしかないと覚悟を決めてホテルに向かった。
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