406人が本棚に入れています
本棚に追加
マサルくんはギターに視線を落としコードの位置を確かめると『Happy birthday to you』を弾き始めた。
私も『がんばれー、がんばれー』と思わず力が入る。ちょっと危ないところもあったが、なんとか弾き終わると、また会場は温かい拍手に包まれた。
再度、彼が呼びかける。
「あー、これで終わりではありません。今度は弾きながら歌うので、よかったら皆さんも一緒に歌ってやってください。ディア○○の部分は……ママでお願いします」
マサルくんの二回目のギター演奏が始まると、ステージの照明だけを残し、会場は間接照明のみとなった。
「ハッピー バースデートゥーユー ハッピー バースデートゥーユー」マサルくんのギターに合わせみんなが歌い始める。タイミングをみて、私は丸形の銀トレーに直人さんが急遽買ってきてくれたバースデーケーキをのせ、絵里さんのテーブルへと慎重に運んだ。
「ハッピー バースデー ディア マーマー ハッピー バースデートゥーユー」
歌と演奏が終わり「絵里さん、おめでとー」彼が絵里さんのテーブルに向かって拍手を送ると、みんなもそちらへ振り向き拍手する。
「絵里さん、ロウソク消して」私の言葉に絵里さんは頷き、二回ほど息を吹きかけロウソクは消えた。
絵里さんは、化粧が全て落ちるほどの涙を流して、テーブルに戻ってきたマサルくんを強く抱きしめた。
「マサル、ありがとうね。ママとっても嬉しい」
最初のコメントを投稿しよう!