最終話

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 6時を過ぎるとライブ目的に集まったお客さんがステージの方へ流れていく。ドリンクを運んでいる私の耳に「こんばんはー」と明るい声が響いた。そしてすぐに「ママおかえりー」とマサルくんの声が。  キッチンへ戻ると、直人さんがマサルくんのママ……絵里さんに、ライブを楽しみながら食事でもどうかと提案していた。遠慮する絵里さんをマサルくんが「行こーよー」と無理やり手を引っ張って連れていく。  7時になりライブが始まった。  私は絵里さんとマサルくんから受けたオーダー『オムライス』と『えびピラフセット』を二人のテーブルへと運び「楽しんで」と声をかけると、アーチ型の壁の入り口に立ちライブを見守る。  1時間ほどのライブが終わった直後、彼がみんなに呼びかけた。 「すみませーん、メンバーさんにもお客さんにも、もう少しだけ残って頂いて、もう一曲聴いていってもらえませんかー」  その声に、立ち上がろうとしていたお客さんは腰を下ろし、ステージを降りたメンバーは空いたテーブルに座った。
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