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「マサル!」彼は手招きする。
自分の息子の名前を呼ばれ驚く絵里さんに、マサルくんは笑顔で「サプライズ」と、ひとこと言って席を立った。
「マサルは俺のギターの可愛い生徒です。今日はギターでママの誕生日をお祝いしたいそうなので、みなさんに練習の成果を聴いていただき、絵里さんには息子さんの成長を感じてもらえたらと思います」
彼からギターを受け取ってステージの中央に置かれた椅子に座ったマサルくんは、彼を見上げ恥ずかしそうにモジモジしている。彼はマサルくんと同じ目線になるようしゃがむと、マイクの高さを調節しながら「マサルなら大丈夫だ!」と声をかけ、そのままマサルくんを見守るように少しだけ後ろに下がった。
「えっとー …… ママ、お誕生日おめでとう。いつもお仕事頑張ってくれてありがとう。僕もギターの練習がんばったので聴いてください」
マサルくんの挨拶に、会場は割れんばかりの拍手が鳴り響く。まさかの展開に絵里さんは両手で口を塞ぎステージを見つめた。
少しずつ拍手が静かになっていくのを見計らって、彼がマサルくんの背中に手を当て合図した。
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