きっかけ

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私は彼女の背中を見送ると、昨日の出来事を思い出していた。 廊下ですれ違いざまに馬場さんから呼び止められた。 彼は企画部の仕事を多く担当している営業だ。 誰とでもすぐに打ち解けられる性格で、声が大きく豪快な人だ。頼りがいはあるが、体育会系のノリがあるから私はちょっと苦手なんだよね。 「今週の金曜日に企画部のメンバーと飲み会を計画してるんだけど、三上君がさぁ、橋本ちゃんも呼んで欲しいって言ってるんだよね…参加してくれない?」 企画部といえばクリエイティブな人材の集まり。きっと話についていけないし緊張する。…断りたい。何より誘われた理由に納得いかなかった。 「他部署との交流のために…」とかじゃないの? しかもデザイン部から私だけ? 挨拶ぐらいしかしたことない三上さんに…なんでそんなことお願いされなきゃいけないの! 「私が参加しても場違いですし、どうぞ皆さんだけで…」 やんわり断ろうとしたが、馬場さんは続けて 「三上君ね、橋本ちゃんが来ないなら自分も参加しないなんて言うんだよ。もちろん俺らの奢りだから来てよ!」 奢りとかそういうのはどうでもいいのよ。 なんだ三上さんのそのワガママは! 強引すぎるでしょ! もぉ〜、頼まれた馬場さんも馬場さんだよ、ずるい! そんな風に言われたら断れなくなるじゃん。 おかしいって思わないの? しばらく返事に困っていたが、イイことを思いついた。
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