228人が本棚に入れています
本棚に追加
/164ページ
琢磨と会うのは今日で何度目だろう。
琢磨と初めて2人で会った日にキスされた。
なのに、何度会っても「好き」だとか「付き合いたい」とは言ってくれない。
だから琢磨がその先に進もうとしてくるのを断固として拒み続けている。
都合のいい女にはなりたくない。でも好きになってしまった…会いたい。
拒み続けても会ってくれるのは、どうにか嫌われずに済んでいるからだろう。
車から降りて少し歩くことにした。
人気のない遊歩道を並んで歩いていると、琢磨はふざけて脇腹をつついてきた。私はビクッと体を反応させる。彼はそれを面白がって何度も繰り返す。そして今度は後ろから抱きついて左右にぶんぶんと揺らしてくる。
琢磨は時々子どもの様なことをしてくるので困る。
私は「やめてよ〜」と笑いながら琢磨の手をバチバチと叩いた。ようやくほどかれた手は、私の右手を包んだ。
「ねぇ、一緒にホテル行こ?」
またか…。
「絶対にイヤ!」
「お願い」
「ヤダヤダ」
「じゃ、何もしないから一緒に行って?」
「何もしなくてお金だけ払うなんて、もったいないじゃん」
私は何を言っているのだろう。なんだ、この押し問答は…。
これで何度目だ。
いつまで続くのだろう。
なぜか急に冷静になってしまった。
このままでは本当に嫌われるかもしれない。
あれだけ2人の関係がハッキリするまでダメだと決めていたのに…。
気持ちが揺れてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!