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「よろしく、アライズさん」
「こちらこそよろしくお願いします、サクノス様」
ああ、本当に演技が上手だ。
彼と挨拶を交わしながら最初に思ったのはそれに尽きる。
きっと、誰も彼を疑わない。
完璧なほどに自然で無害な笑顔。
それは私にとっては恐ろしく、不気味だった。
経験上、こういう奴ほど厄介だ。
そう、厄介なのだ。
「アライズ嬢はお身体が弱く、春に入学試験を受けられなかったと聞きましたが、お元気そうですね」
サクノスを挟んで隣から聞こえてくる声、王族の証である金色の瞳。
第二王子、リュシアン・アルバート。
美しい銀髪と金色の瞳の組み合わせは非常に目立ち、美形なのも相まって存在感しかない。
お偉いさんたちが大事にしたくない理由の一つは、このやんごとなき御方がいるからだ。
王太子は3年生なのでまだいいが、第二王子は同じクラス。
せめて席を引き離せばいいものだが、書類によればこの学園は自由席で、この二人は仲がよろしいらしい。
「ええ。第二王子殿下にお声かけいただけるとは。光栄で御座います」
書類のことを思い出し、適当な敬語になってしまったが王族への返しは果たしてこれでいいのか。
上司にマナーの指導お願いしとけば良かった……。
「では、授業を始める」
教師の声かけで一限目の授業が始まった。
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