3人が本棚に入れています
本棚に追加
授業は別に問題なかった。
魔法省で叩き込まれた内容の一つに過ぎないし、実技も魔法道具のおかげでいい感じに調整出来た。
そして、分かったことが一つ。
(サクノスも魔法道具使ってるのか)
当たり前だが、彼も私と同じで黒魔法しか使えない。
黒魔法使いと灰魔法使いが白魔法を使うには道具に頼るしかないのだ。
一日が終わって放課後になり、サクノスが話しかけてくる。
「アライズさんは今日通い始めたのによくそこまで出来るね……」
「体調が優れず外に出れない間は勉学に励んでおりましたので」
「体調が良くない時は寝てた方がいいと思うよ?」
サクノスは誰に対しても態度が変わらない。
会話は途切れないし、相手への気遣いも出来る。
これで白魔法使い殺しの犯罪者、か。
人間の闇を感じ身震いしていれば、サクノスはクラスメイトに呼ばれて去っていく。
今日一日ここで過ごして、サクノスがどういう人物なのか分かった。
彼はクラスの中心人物であり、第二王子とクラスメイトたちの橋渡しをする役目さえ担っている。
もし、サクノスを私が上手く暗殺出来たとして、彼が突然いなくなったら大きな騒ぎになるだろう。
このことすらも計算しての行動だとしたら、とんでもない策士だ。
(こんなに情熱を注ぐほど、白魔法使いに恨みがあるのか。それとも、ゲーム感覚で楽しんでいるのか?)
書類を読んでも一日近くで過ごしても、サクノスを捕まえるのに有益な情報は見つからなかった。
上司は潜入捜査と言っていたし、わざわざ魔法学園に編入させたくらいなので、これは最初から長期戦覚悟の仕事だ。
ただ、それにしても骨が折れそうな仕事を引き受けてしまった。
(……しょうがない、それが灰魔法使いだ)
私は小さく息をつき、鞄を持って教室を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!