10人が本棚に入れています
本棚に追加
カエルくんはくるりと背中を向けました。
どうせそうだろうさ。カエルが澄んだ声を出したいなんて、出すぎたねがいなのさ。
バカだなあ。みんな同じ音じゃ、音楽をかなでられないじゃないか。
バカだなあ。バカだなあ。
いろんな高さ、太さ、ひびき、強さで、いろんなみずたまくんが言っています。
さあ。君もいっしょにうたおうよ。
耳を立てれば、あっちからもこっちからも、のそっとしたのや、ぴやぴやした声や、笑っているようなささやきが聞こえます。みずたまくんたちだけじゃない、いろんな子たちがいるのです。
がろげろ、ぴゅーいぴゅーい、さささ、ひょいひょい、ぽつん、ぴちょん。
あれはだれの音だろう。
カエルくんは、もう一度空をふりかえりました。
いっしょにうたおう。
みずたまくんたちがさそいます。
ガラゴロロ。ゲゲグワグワ。
カエルくんは声をはり上げてくわわりました。カエルくんのような低くて力強いハモり音は、他のだれにも出せません。
雨の田んぼは、にぎやかです。
(終)
最初のコメントを投稿しよう!