カエルくんのねがい

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カエルくんはくるりと背中を向けました。 どうせそうだろうさ。カエルが澄んだ声を出したいなんて、出すぎたねがいなのさ。 バカだなあ。みんな同じ音じゃ、音楽をかなでられないじゃないか。 バカだなあ。バカだなあ。 いろんな高さ、太さ、ひびき、強さで、いろんなみずたまくんが言っています。 さあ。君もいっしょにうたおうよ。 耳を立てれば、あっちからもこっちからも、のそっとしたのや、ぴやぴやした声や、笑っているようなささやきが聞こえます。みずたまくんたちだけじゃない、いろんな子たちがいるのです。    がろげろ、ぴゅーいぴゅーい、さささ、ひょいひょい、ぽつん、ぴちょん。 あれはだれの音だろう。 カエルくんは、もう一度空をふりかえりました。 いっしょにうたおう。 みずたまくんたちがさそいます。    ガラゴロロ。ゲゲグワグワ。 カエルくんは声をはり上げてくわわりました。カエルくんのような低くて力強いハモり音は、他のだれにも出せません。 雨の田んぼは、にぎやかです。 (終)
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