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きっと帰ってこないだろうと思ったが、それでも僕は、食事の用意をする。本日のメニューは、シチューだ。僕は完成してから、ダイニングの椅子に座った。現在、午後の六時だ。僕はオブジェでもある時計の文字盤を、何気なく見上げた。すると――十分後に、エントランスの扉が開く音がした。驚いて、僕は目を丸くした。
「ただいま」
「っ、劉生……?」
「ワインを買ってきた。快気祝いに一杯どうだ?」
「う、うん!」
まさか帰ってくるとは思わず、僕は現実なのか疑ったままで、頷いてからシチューを温めなおした。そして準備を終えてから、二人で席につく。
「治って良かったな」
「あ、ありがとう。劉生のおかげだよ……」
「これで思う存分デキるな」
二ッと笑って劉生が言ったものだから、僕は赤面した。
食後、入浴を終えてから、僕達は寝室に向かった。僕の服を乱した劉生は、静かに僕の鎖骨の上に口づける。その後、僕の背後にまわった劉生は、僕を下から貫いた。
「あ、あ、あ」
久しぶりの行為に、僕の体が熱を帯びる。僕の両方の太股を劉生が持ち上げたから、僕は不安定な体勢で、最奥までを貫かれる形となった。その状態で激しく腰を揺さぶり突き上げられて、強い快楽に僕は涙をボロボロと零した。かき混ぜるように腰を動かしたり、グッとうがったままで動きを止めたりする劉生に翻弄され、僕は舌を出して必死で息をする。
「んン――ぁあ! アああ! ぁ……ひぁ!」
「本当に可愛いな」
「ぅ、ぁ……ああ! っッ、も、もう――あああ!」
劉生に一際強く突き上げられた瞬間、僕は放った。
しかし劉生の動きは止まらない。そのまま激しく抽挿されて、僕の頭は真っ白に染まった。この夜、僕達は、ずっと繋がっていた。
翌朝目を覚ますと、僕は横から劉生に抱きしめられていた。
今日は日曜日だ。そう思って時計を見ると、もう昼下がりだった。
「おはよう、夏海」
「お、おはよう……これから、お出かけ?」
昨日行かなかったのだからと、僕は微苦笑しながら尋ねた。すると片目だけを細くして、劉生が呆れたような顔をした。
「何処にもいく予定は無いぞ?」
「ほ、本当?」
「ああ。俺、いつも言ってるよな?」
「え?」
「『いい子で待ってろ』って。どうやら、夏海はそれが守れないらしいからな、これからはきちんと見張っておく事に決めた」
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