それでも、スマホを見てしまう。

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「――? どういう意味?」 「自分の体を大切にできない悪い子だろ、お前は。二度と体調を崩さないように、しっかり俺が見ててやるよ」  そう言うと劉生は吹き出すように笑ってから、僕を改めて抱きしめた。  このようにして、劉生の浮気癖はなりをひそめた。代わりに週末は、僕を抱き潰すか、そうでなければ僕をデートに連れ出してくれるようになった。二人でならば、僕も外出していいらしい。すっかり僕は、劉生に囲われている。 「お前は俺だけを見ていればいいんだよ。ちゃんと、いい子で、な?」  劉生はそう言うと、ギュッと僕の手を握った。現在僕達は、一緒に買い物に来ている。僕は頷き、劉生の手を握り返した。いつか劉生が浮気をした店長のいるお店だったから、僕は浮気相手の姿を探してみた。すると、僕と同じくらいの身長で、僕と同じような髪の色の青年がいた。 「……劉生って、一目惚れしたっていうけど、僕みたいな髪色と背丈が好きなだけでしょ?」 「は? なんだよ急に」 「違うの?」 「違う。なんでいきなりそんな事を――……ああ、あいつか。違うよ、本当に」  僕の視線に気づいた劉生が苦笑してから、続いて楽しそうに笑った。 「俺が好きなのは夏海だ。俺の浮気相手は、基本的にお前に似てる相手だ。お前に似てる相手を選んで浮気してたんだよ」 「え?」 「俺には、お前だけだ。浮気相手には常に、お前を重ねてた」 「っ」 「特にお前が具合悪そうな時は、抱いて無理をさせたら悪いと思ったから浮気した。勿論、お前が俺に嫉妬するところを見たいっていうのも本心だけどな」  劉生はそう言うと、改めて僕の手を握った。 「でもこれからは、俺がきっちり体調管理もしてやるし、お前が俺の相手、してくれるよな?」 「う、うん!」  以後――劉生の浮気は本当に止まったのである。  浮気癖が無くなった劉生の、僕をちょっと溺愛しすぎる愛の重さに、僕は日々驚いている。しかし決して嫌ではない。それがすごく、嬉しい。      ―― 了 ――
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