それでも、スマホを見てしまう。

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「浮気じゃねーよ。ただの性欲の解消だ。夏海が病んでて、かつブラックにいたから、ヤれる機会が減ってただろ? 俺はそれじゃあ足りなかったんだよ」 「……でも、僕は今は、仕事を辞めたし……じゃあ、もう……浮気しない?」 「あー、そうだなぁ」  劉生が呆れたような顔で僕を見て、そして頷いた。  だがその翌週も、劉生は朝帰りをした。 「ただいま」 「ねぇ、スマホ見せてよ」 「『おかえり』より先に、第一声がそれか?」 「見せて」 「――好きにしろよ」  そう言って劉生が、僕にスマホを手渡した。見れば、昨日の夕方、ホテル前に現地集合とあった。ラブホはなんと予約済み。前々から計画して待ち合わせをしていたらのが分かるやりとりもあった。前回とは違う相手だ。 「これもセフレ?」 「そうだよ」 「……僕も、セフレの一人って事?」 「は? なんでセフレと同棲するんだよ。お前は俺の恋人だろ?」 「……っ、だったら、二度としないで。二度としないでね? 浮気なんて、二度と」  この時、僕は号泣しながら懇願した。劉生は、そんな僕を、何も言わずに見ていた。  それが半年前の事だ。  以後、劉生は月に三度は朝帰りをする。週に三回は僕を抱くが、土曜日か日曜日、あるいは金曜の夜は、四週に三回は外泊する。当初、欲求不満が原因ならばと考えて、僕が悪いのかもしれないと思って、僕は積極的に劉生をベッドに誘った。劉生が好きだからだ。別れたくなかったし、何よりも愛しているからだ。すると、結果としてSEXの頻度は、学生時代よりも増えた。けれど――劉生の浮気は、止まらない。  僕はコートを握りしめ、改めて劉生を見た。  瞬きをしたら、僕の眼窩から涙が筋を作って零れ始めた。胸が締め付けられるように痛い。その内に、息苦しくなって、僕は嗚咽を堪えられなくなった。 「なんで浮気なんかするんだよ!」 「なんでだと思う?」 「僕じゃ欲求不満なんでしょ? でも、だからって、だからといって――……」  僕はボロボロと泣くしか出来ない。怒りよりも悲しみの方が強い。 「教えてやろうか?」 「僕の体じゃ満足できないから?」 「――違うよ」  泣いている僕の頬に、劉生が触れた。そして親指で、僕の頬を流れる涙を拭った。 「夏海。お前今、嫉妬してるだろ?」 「当然だろ!」 「傷ついてるだろ?」 「当たり前だよ!」
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