それでも、スマホを見てしまう。

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 笑いながらそんな事を言う劉生を、僕は睨んだ。しかし劉生の瞳は、まるで僕を抱く時のように、どこか獰猛に煌めいているし、口元には笑みが浮かんでいる。  ――?  表情の意味が分からない。 「泣いてるお前を見ると、俺への愛を感じるんだよ」 「……は?」 「愛されてるんだなぁ、俺って思う」 「な、何を言って……?」 「どんなに浮気しても、傷つけられても、お前、俺の事大好きだもんな?」 「っ、そ、それは……そうだけど……」 「嫉妬して泣くお前を見てると、キュンとするんだよな。それに俺、夏海の泣き顔も好きだしな、これは元から」  唖然として、僕は目を見開いた。  何を言われたのか、当初意味が分からなかった。じっくりと、脳裏で劉生の言葉を反芻してみる。そして、結果として、さらに号泣した。 「そんなの僕にはどうしようもない。ねぇ、そんな事言わないで、もう浮気はやめてよ!」 「普段の夏海、俺への愛が足りないんだよ。夏海の愛が足りないのが悪い」 「っ」 「俺に浮気をやめさせたいんなら、もっと俺を愛せよ」 「な……ぼ、僕は劉生が好きだよ! 僕は浮気なんかしないし……劉生を愛してる!」 「そうだよな? 夏海は一途だし、浮気なんかしないもんな?」 「当然だよ。だから、劉生も――」 「お前がしないからって、俺もしないという話になるわけが無いだろ? 俺とお前は別だ。夏海は浮気したら許さないからな? でも、俺は約束なんかしない」  劉生はそう言うと僕を抱きしめた。その温もりは優しい。  僕の耳の後ろを擽りながら、劉生が笑み交じりの声で続けた。 「夏海の愛が足りないのが悪い」 「……劉生。僕は、どうしたらいいの? 僕にどうしろっていうの? 僕は何をすればいいの?」 「俺の事が好きか? 好きだよな。知ってる」 「大好き」 「じゃ、とりあえずベッド行くか」  こうしてその後、僕は劉生に抱かれた。浮気をした後、必ずと言っていいほど、それが露見すると劉生は僕を抱く。そして有耶無耶にしてしまう。優しく抱かれると、僕は何も言えなくなってしまう。ベッドの上で、好きだと言ってもらった時、僕は劉生が少しは僕を好きらしいと確かに感じるし、それだけでも胸が満たされてしまうからだ。  そうなると、事後になっても、僕はもう糾弾できなくなる。
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