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大学を卒業すると、めっきり友人と休日が合わなくなる。
『ごめん、その日は仕事だ』
『残念。じゃ、また都合の良い時な』
『本当、悪い』
トークアプリで俺は、大学時代の友人からの誘いを断った。
これは年末年始の記憶だ。確か、久しぶりにみんなで集まろうという誘いだったと思う。
ごくごく平均的なサラリーマンをしている俺は、年末年始から三月の頭までの期間に昔ながらのデスマーチがあったせいで、その後春先になってからまとめての休みを得た。俺にとって、年末年始はお休みでは無かったといえる。
「でも、やっと休みに入るのか」
俺の働くベンチャー企業は、小さいながらも一次受けのシステム関連の会社だ。年俸制で、休暇の取得数も最初から決まっているので、他の社員やプロジェクトの状態にもよるが、好きな時に好きな期間、まとめて休める。
だが世間では新年度が始まるため、昔からの友人は逆に多忙になってしまった。
「……誘える相手がいない……我ながら寂しすぎるな……」
別に俺はシステム開発の仕事が好きなわけではなく、学生時代は文学部に在籍していた。単純に、最初に就職活動で内定の通知を貰ったのが、今の会社というだけだ。
最近の利点として、本格的に今年度からリモートワークが取り入れられたのは、本当に良かったと思うが、なんだかんだで俺は前回の冬までは出社している事が多かった。周囲の同僚も同じだ。
「はぁ……」
気づけば溜息が零れた。
そんな平凡な俺が、唯一定期的に休みになって向かう先はと言えば、美容院くらいのものだ。元々は千円カットであったり、理髪店に出かけていて、お洒落に気を遣う事も無かった俺だが、大学時代に先輩の勧めで、『ハウト』という名の美容院に行って以後、そこで切るようになった。
と、いうのも、その美容院で俺を担当してくれている明里さんという男性の美容師さんが、定期的にトークアプリで俺に連絡をくれるからというのが大きい。あちらにしてみれば営業の一環なのだろうが、二十三歳の俺と歳も近く、話も合う。
今も、トークアプリで、俺は明里さんと、月額制の有料動画サイトで最近配信が開始された映画について語り合っている。
『あの場面、最高でしたよね! 明里さんも好きそうだなぁって思ってました』
『分かります、俺も同じ意見!』
癒される。
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