voltage

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 不器用すぎる私たちだって、いつも同じ行動をとっているわけじゃない。  誰よりも面倒な人間で、何重にも捻くれていて。  ある日突然、図書室は私だけの空間になった。  司書の先生が、カウンターでキーボードを弾く音がやけに冷たく聴こえて、私はもれなく本の世界に逃げ込む。   『青い蝶を選んだあなた。過去のトラウマや失敗から、奥手になりすぎているのかも。勇気を出して、何よりもまず自分に正直になってあげて』  ……よりによってタイミングが悪い。  たまたま開いたページの『恋愛占い』の文字を恨めしく見つめても、何も起こらない。当たり前だ。  こんなことなら、今日くらいあいつみたいに、分厚い辞典なんかでも読んでいればよかった。    そこに誰も居ないから、いつもは見えない本の背表紙が欠けることなく視界に入る。  皮肉だ、と思った。私みたいに、私たちみたいに。  期待していたわけじゃない。  そこに居てほしかったわけじゃない。  でも、どうせ二人きりになるなら、私は今この状況みたいじゃなくて、……あいつとが良かった。  そう心でつぶやいた瞬間。
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