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剣道部は体育館の下にある武道場で活動している。
部員は3年生の先輩が4人、2年生が3人、1年生は俺含め4人と他の部活と比べたら少数精鋭で頑張っている。
少ないながらもさすがは樟蔭学園というべきか、たくさんの賞をいただいている。
1年生はまだ公式試合にあまりでれていないので特に何も無いが、先輩はひとりひとりが全国レベルなので団体戦では当たり前に優勝を掻っ攫っていってる。
ほとんどが中学から上がってきているので顔見知りでしっかりと技術やら何やらを指導してもらっている。本当に頼れる人ばかりだ。
だがしかし、やる気はあっても道着は本当に暑すぎて死ぬ……
早素振りという練習後フラフラになりながら壁に寄りかかって水を飲んでいると
「よっ」と汗をタオルで拭きながら剣道部同級生の平村が話しかけてきた。
平村は暑いにも関わらず俺の隣に座りやがった。
「平村お前近すぎじゃね?暑いわバカ」
俺が少し左にずれると平村も同じように同じ距離分詰めてくるので何も変わらない。
こいつ…バカなのかもしれない…
「よいではないか、よいではないか」とさっきよりも近づいてくるこのイケメソ。
こいつ…バカだ。(確信)
「お前そんなんだからみんなになんか違うって言われるんだぞこのバカ」
「いいんですぅ みんなが勝手に優しい真面目イケメン平村を、想像してるだけだっつーの 別に詐欺ってるわけじゃねーしさ」
バカには触れないこのバカは眼鏡をかけていて第一印象は真面目なイケメソだ。
俺は認めない。
不真面目なのに頭のいい、こいつを俺は認めない。
「別に匂いフェチでもよくね!?」
「ちょっ」
そういいながら俺の首元に顔をうずめる
「あーいい匂い」
「きっしょ、ほとんど汗の匂いだよバカ、ふふっくすぐったぁー!!やめろバカあははっ」
この眼鏡イケメンは匂いフェチの変態だ。
色々な人に会うたびに「すみません、嗅がさせてください」と匂っていくガチのやべぇやつだ。
まぁ、友達とかにしか、んなこと頼まないけどやっぱり変態だ。(確信)
平村の栗色の柔らかい髪が首と耳にあたってとてつもなくくすぐったい。
身を捩らせながらそのくすぐったさに耐えていると
「これだよこれ、この反応だよ、みんな俺が嗅ぐと喘ぐか罵倒するかのどちらかなんだよクソが、その気にさせたい気も誘ってるわけでもねぇのによ」
と、急に愚痴を始める。
なんやねんそれ。
「なんそれ、みんなノリよさそうじゃんなにをそんなに怒ってんのさっ…ぐふふ…こしょぐって」
「みーんながちなんだって、俺はどちらかといえばタチだと思われるからさ、ネコには誘われタチには嫌悪され……簡単に匂えねぇよ」
「タチ?猫?けんお?」
なんだそれ、3つとも知らねぇ単語だよ。
これだから頭のいいやつは…
「俺の知能までちと会話のレベルを下げてくれないかの」
「おっまえ…嫌悪はわかってくれよ」
呆れたように息をつき、俺から離れていく平村。
なんか腹立つなこいつ。
一発殴って眼鏡破壊したろか。
「でも逆に無知の方が楽しいかもだよな……なんで俺こんなに穢れちまったんだよ…」
「お前がきれいだった頃って…なくね?」
平村の肩をポンと叩き、同情2割、優しさ1割、煽り7割のニヤケ顔をプレゼント。
平村は息をつき、顔を上げ、爽やかな笑顔でまるで映画のワンシーンのように俺をふり返る。
「覚悟は……出来てるな?」
「み゙ぎゃっ」
俺等は先輩に止められるまでトムとジェリーごっこを延々と繰り返していた。
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