第十章 都夢の家 五

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 地下社会を知っていれば、もしかして地下社会で生きているという望みも出る。だが、地下社会は近くても、とても遠い場所だ。簡単には会いにいけない。 「それで、英ト。これ恐竜か?」 「いや、恐竜はこの時代には生きられない。でも、これは…………絶滅した種だろうな」  俺と英トが、動物の映像を見て、あれこれ議論していると、横で珠緒がじっと俺を見つめていた。  そして珠緒が、眉間に皺を寄せたので、つい俺は固まってしまった。珠緒の真っ黒な目は、何を考えているのか、全く読めない。 「珠緒ちゃん……」 「……そこに行ってみたい」   どうも珠緒は、都夢の家の牧場に行きたかったようだ。  だが俺は珠緒から目を逸らすと、道原を呼び、都夢の家の説明を準備した。そして、都夢の家は、地下社会のシークレットで、近寄る事は出来ない旨を拡散するように伝えた。 「地下社会は言わずの掟がある。破れば制裁がやってくる。だから、知らないほうがいい」 「分かりました。そう、加藤と堂本、あと母さんにも言っておきます」  これで、都夢の家の所在調査は終了とするが、やはり現場に行ってみたい。 「道原、通訳を専門商店にしてやるからさ、地下社会に行こう」 「どういう論点ですか」  道原は裏社会の住人で、地下社会の住人ではない。だから、無暗に地下社会に近付くと、殺されてしまう可能性がある。だが、地下社会でも、裏社会の専門商店には手を出せない。 「まあ、つまりは、都夢の家に連れてゆけという事ですか?」 「そういう事」  道原の情報屋としての評価はとても低い。それは、道原が劣っているという事ではなく、もっと凄い人間が大勢いるからだ。  だが、道原の通訳能力は、機械を超えている。それは、物事を伝えるだけではなく、人の感情や先読み、様々な感情やニュアンスも伝えるからだ。そして、道原の通訳能力ならば、一流と言ってもいい。
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