第十一章 夜が静かになる

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 英トが嘆いていたが、銀河は毎日のように拉致されそうになっているらしい。 「銀河、美少女のような姿だ……拉致もしたくなるだろう」 「……夏目さんと激似なのに、銀河は美少女です」  雑談をしている間にも車は走り続け、地下社会に入った。そして、街中を抜けると、草原のような場所に入った。  車は草原の中を走りだしたが、景色に反して、物凄く揺れた。もう喋っている場合ではなく、全身がシャッフルされて、ガクガクになってしまいそうだ。  自動車はオフロード仕様にしてあるが、荷物が転がって飛んでいた。 「夏目ちゃん、おいで」「 「ど!うぐあああぐ!!」  どうして珠緒は平気なのかと、聞こうとしたが、舌を噛んでしまった。そして、珠緒が俺を拾い上げた。 「浮いているから、揺れないよ」 「ありがとう」  どういう論理で浮けるのか気になるが、今はそのままにしておこう。 「地下社会にも自然があるの?」 「地下社会は田舎だから、山も森もある」  でも、この場所は俺も知らなかった。  ここは草原で、周囲には何もない。しかも、車が走り続けても草原だった。  都夢の家は、よくこんな何もない場所を、探し出せたと思う。
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