第十一章 夜が静かになる

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「だが、こんな草原に、廃墟があるのか?」 「それは、こんな場所にも住人がいたからだよ」  珠緒はシリーズを全て見たと言い、隣人として、鶴川夫婦、独身貴族の藤川、敦見、前田というコンビも出て来ると教えてくれた。 「見えないほどに遠くに在っても隣家という鶴川夫婦は、陶芸用の土を販売しているよ。それで、自分達も陶器のタイルを作っている。それが、模様入りで凄く綺麗。僕も千枚くらい購入したよ」 「何に使用したの???」  そして、動画の中では、子供達が学校に通っているシーンもあるという。 「こんな場所に、コミニティーがあるのか」 「どこかに、飲みに行っているシーンもあったよ。どこに居酒屋があったのだろう」  ここには草原だけがあって、他には何もない。本当に、どうやって生活しているのだろう。  道も無いと思っていると、空に小型飛行機が飛んでいた。もしかして、ここは車で来る場所ではなかったのかもしれない。 「飛行機か……」 「いいね、空は凸凹がないから揺れないよ」  もしかして、俺は移動手段を間違えたのかもしれない。 「夏目ちゃん、あっちに、家が見えてきたよ」 「どこ?」  俺の目に見えないほど遠くにあるものが、珠緒には見えているのだろうか。俺が慌てて地理を検索すると、珠緒の指さした先には、何も無かった。  しかし、百年くらい前には、そこに炭焼きを生業とする集落があった。 「珠緒ちゃん、今を見て!」 「そうだね」  珠緒は、何を見ていたのだろう。  都夢の家は、家が出来上がると、次に畑を耕し始める。しかし失敗の連続で、まともな作物が実らない。そこで、讃多と勘助は、あれこれ参考にして、自分達の菜園を作り始める。  ここで、真面目で実直な勘助が人気になり、旦那にするならば、こんな人がいいという意見が多く出る。俺も旦那にするのならば、勘助のような人物がいいと思う。そして、讃多のような笑顔の眩しい嫁が欲しい。  讃多は多くの発見をして、常に笑顔を忘れない。そして、労働を苦ともせずに、太陽を見ては笑い、実ったと喜ぶ。
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