第十一章 夜が静かになる

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「鹿かな…………」  二本足で歩くしかがいる。カンガルーにしては、角が生えている。  普通に牛もいるが、茶色や黒いもののほかに、真っ白というものもいた。普通の白黒二色の牛はいないが、美味そうに草を食べている。そして、牛と一緒に、羊やヤギも放し飼いになっていた。その周辺を、牧羊犬が走り回っている。  一見すると、長閑な光景なのだが、そこに見た事もない鹿も交じり、ダチョウのような巨大な鳥も交じっていた。 「何かの楽園か?」 「そうだね。凄いや!」  ここは、楽園か悪夢だ。  そして赤い屋根の厩舎の横で、女性が大きく手を振っていた。 「乃々さんかな?」 「はい。アポイントを取っています。そうしないと、殺されそうでした」  道原がマメで助かる。そして、確かにこの場所を見張っているような視線を感じる。でも、はっきりとした気配を掴めないので、プロだろう。  更に車が走ってゆき、厩舎に近付くと子供が二人ほど走ってきた。 「息子の、悠輝と研悟か……」 「そのようですね」  道原が車を止めると、悠輝と研悟らしき少年が車のドアを開けた。そして、珠緒を見て、目を輝かせた。 「一緒に遊ぼうよ!!」 「凄い!!こんな生き物は、初めてみた!!生き物?」  何が凄いのか分からないが、少年が珠緒の服を引っ張ると、皮膚ではなかったのかと驚いていた。そして、体温があり、ちゃんと生き物なのだと理解すると、揃って尊敬の眼差しを珠緒に向けていた。 「凄い!!!!!」 「灰色の皮膚。そして、複眼の目。でも、心臓は一つで、肺呼吸もしている。陸の生命体?いや、地球の生命体?」  肺呼吸もというと、他でも呼吸をしているのだろうか。俺が珠緒によじ登ると、珠緒は皮膚でも呼吸をしていると言っていた。更に、少ない毛も、呼吸器の代わりになるらしい。
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