第一章 三毛屋

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「ならば、大学に梅花の教室を作る」 「大学も、補強工事中で、最低の機能しか稼働していません」  しかし、工事の中に、梅花の教室は入っているのだろうか。  もしも梅花の教室が無かったら、地下にあった保管庫を改造し、教室にしてやる。あれは、なかなか宇宙船的で良かった。 「!!」 「夏目さんの閃きには、毎回、酷い目に遭いますね……」  道原は俺を抱えると、頬擦りして毛の感触を確認していた。道原は、大のモフモフ好きで、俺の毛を気に入っていた。俺も道原を気に入っているが、それは移動手段として最適だからだ。まあ、でも、相思相愛としておこう。 「ま、それは置いておいて。道原、何の事件だ?」 「事件というわけではなく、どちらかといえば探し物でしょうか…………」  道原は通訳として活躍しているが、情報屋を目指している。だから、道原が困る依頼だとすると、情報に関する事だ。 「話すと、長くなります」 「では、農作業してから、夕食の時に聞く。手伝ってゆけ」  ここは何も無いが、食べ物と綺麗な空気は、余るほどに在る。だから、働いてくれれば、幾ら居ても構わない。 「俺達が農作業ですか?」 「いいか知識というのは、憶えるものではなく体感するものだ。やってもいない事は、リアルではない」  だからゲームは体感した事にはならない。ただの知識の蓄積は、時として、子供にも劣る発想に陥る。 「少年よ、労働せよ」  様々な経験を経て、しぶとい大人になって欲しい。 「バイト代は貰いますよ」 「……え?」  しかし、これで労働力は確保した。  この土地は、四乃守 英トが用意し、いつの間にか俺の名義になっていた。元は四乃守の曾祖父が別荘としていたと聞くが、毒草園と呼ばれていたらしい。そのせいで、今も、希少な猛毒が生えてくる。
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