70人が本棚に入れています
本棚に追加
「ならば、大学に梅花の教室を作る」
「大学も、補強工事中で、最低の機能しか稼働していません」
しかし、工事の中に、梅花の教室は入っているのだろうか。
もしも梅花の教室が無かったら、地下にあった保管庫を改造し、教室にしてやる。あれは、なかなか宇宙船的で良かった。
「!!」
「夏目さんの閃きには、毎回、酷い目に遭いますね……」
道原は俺を抱えると、頬擦りして毛の感触を確認していた。道原は、大のモフモフ好きで、俺の毛を気に入っていた。俺も道原を気に入っているが、それは移動手段として最適だからだ。まあ、でも、相思相愛としておこう。
「ま、それは置いておいて。道原、何の事件だ?」
「事件というわけではなく、どちらかといえば探し物でしょうか…………」
道原は通訳として活躍しているが、情報屋を目指している。だから、道原が困る依頼だとすると、情報に関する事だ。
「話すと、長くなります」
「では、農作業してから、夕食の時に聞く。手伝ってゆけ」
ここは何も無いが、食べ物と綺麗な空気は、余るほどに在る。だから、働いてくれれば、幾ら居ても構わない。
「俺達が農作業ですか?」
「いいか知識というのは、憶えるものではなく体感するものだ。やってもいない事は、リアルではない」
だからゲームは体感した事にはならない。ただの知識の蓄積は、時として、子供にも劣る発想に陥る。
「少年よ、労働せよ」
様々な経験を経て、しぶとい大人になって欲しい。
「バイト代は貰いますよ」
「……え?」
しかし、これで労働力は確保した。
この土地は、四乃守 英トが用意し、いつの間にか俺の名義になっていた。元は四乃守の曾祖父が別荘としていたと聞くが、毒草園と呼ばれていたらしい。そのせいで、今も、希少な猛毒が生えてくる。
最初のコメントを投稿しよう!