第十章 都夢の家 五

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「真子の亭主も、制裁が終わっているのならば、出て来ても大丈夫だろう?」 「会社は、まだTOBOSを使った化粧品を諦めていない。だから、素材の発売を延期としたままだ」  裏社会に捕まり、再び開発に携わってしまったら、また制裁対象になってしまう。 「それに、亭主の青葉は、地下社会にパートナーもいる」  青葉は、制裁の為、地下社会で労働している内に、研究員と夫婦のようになっていた。しかも、その相手は男性で、青葉が妻だ。だから、真子も青葉に依存はしていない。 「それと、勘助の兄は、勘助を溺愛していて……地下社会の重鎮の愛人だ」 「英ト、よくそんな事まで知っていたな」  勘助の兄はクリスと名乗っていて、有名な踊り子でもあった。 「溺愛している弟が、激務で鬱気味になったと心配して、自分の近くに来させたと言っていた」  そして、万屋には隠れる理由がある。 「それぞれに事情があって、隠れているのに、なんで動画配信などしたのだろう……」 「まあ、主に花梨。親には生きていると思わせたかった。そして万屋、動画があるから、普通の人々で、むしろ隠す事ができた」  そして、真子にとっては、動画が主要な収入源になっていて、販売している保存食は動画を見ている人が購入していた。 「花梨か……」  花梨は、夢芽を助けて消えてしまった。しかし、夢芽には花梨の記憶はないが、手芸の知識があるようで、編み物も最初から出来た。そして、その事は、動画の中では、花梨と仲良しの手芸仲間のように映されていた。 「讃多の妻の両親。生きている孫の夢を見ていると言っていた」 「実の孫とは思っていないのか……」  讃多の妻、真由の両親は、四乃守病院に通院していて、時々、英トが診察するらしい。そして、娘は亡くなってしまったが、どこかで生きている感じがしていると笑っていたらしい。  そして、都夢の家の動画を視聴していて、孫が生きて育っている夢を見ていると言っていたという。 「地下社会ならば、どんな出生でも、普通に生活できるからな……」 「そうだな」
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