第十章 都夢の家 五

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「元の姿でも、大して変わらない行動だったが」 「……もしかして、嫁さんに逃げられたのはそのせいですか?」  妻に捨てられたのは、子供の姿のせいだろう。そう思いたい。 「さてと、山科と交渉する。車が到着したら、都夢の家に行ってみよう」 「まあ、大家みたいなものですからね。それも、いいでしょう」  道原は食料を手配していて、キャンプの道具なども揃えようとしていた。そこで、キャンプの道具ならば、家にもあるのでリストを渡しておいた。 「……英ト、夏目ちゃんと一緒に、僕も都夢の家に行ってもいい?」 「ダメ」  地下社会は危険なので、珠緒は来ない方がいい。しかし、珠緒が目を閉じて俯き、涙を流したので、英トが慌てていた。そして、俺も新しい発見があった。 「珠緒ちゃん、瞼があったのか!」 「驚くところは、ソコ???」  瞼というのか、上下の皮膚で目を塞いでいるような感じだ。しかし、目を閉じた珠緒は、顔がどこにあるのか分からなくなる。ただでさえ、珠緒は前後も分からないような風貌なので、やはり目がポイントだったのだ。 「夏目、珠緒を守れるか?」 「無理だ」  地下社会に行けば危険が伴う。道原が一緒となると、道原を守るだけで精一杯だ。でも、道原には後学のために、あれこれ見せておきたい。 「珠緒……」  英トが珠緒を宥めようと手を伸ばすと、珠緒は手を振り払って背を向けた。 「英トなんて、大嫌い!」 「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」  英トの驚愕した表情を、可哀想で見ていられない。英トは驚愕した後に、ずっしりと沈み込み、この世の終わりのような表情をして床にへたり込んでいた。 「夏目…………」 「無理です」  俺は道原と一緒に、地下社会に行って来るのだ。
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