66人が本棚に入れています
本棚に追加
/159ページ
「元の姿でも、大して変わらない行動だったが」
「……もしかして、嫁さんに逃げられたのはそのせいですか?」
妻に捨てられたのは、子供の姿のせいだろう。そう思いたい。
「さてと、山科と交渉する。車が到着したら、都夢の家に行ってみよう」
「まあ、大家みたいなものですからね。それも、いいでしょう」
道原は食料を手配していて、キャンプの道具なども揃えようとしていた。そこで、キャンプの道具ならば、家にもあるのでリストを渡しておいた。
「……英ト、夏目ちゃんと一緒に、僕も都夢の家に行ってもいい?」
「ダメ」
地下社会は危険なので、珠緒は来ない方がいい。しかし、珠緒が目を閉じて俯き、涙を流したので、英トが慌てていた。そして、俺も新しい発見があった。
「珠緒ちゃん、瞼があったのか!」
「驚くところは、ソコ???」
瞼というのか、上下の皮膚で目を塞いでいるような感じだ。しかし、目を閉じた珠緒は、顔がどこにあるのか分からなくなる。ただでさえ、珠緒は前後も分からないような風貌なので、やはり目がポイントだったのだ。
「夏目、珠緒を守れるか?」
「無理だ」
地下社会に行けば危険が伴う。道原が一緒となると、道原を守るだけで精一杯だ。でも、道原には後学のために、あれこれ見せておきたい。
「珠緒……」
英トが珠緒を宥めようと手を伸ばすと、珠緒は手を振り払って背を向けた。
「英トなんて、大嫌い!」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
英トの驚愕した表情を、可哀想で見ていられない。英トは驚愕した後に、ずっしりと沈み込み、この世の終わりのような表情をして床にへたり込んでいた。
「夏目…………」
「無理です」
俺は道原と一緒に、地下社会に行って来るのだ。
最初のコメントを投稿しよう!