妄想

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 大学からの帰り道、僕は道端に、卵のようなものを見つけた。近づいてよく見ると、それは確かに卵のような形で、ただ、白い卵ではなく、怪しい感じの模様がついていた。昔図鑑か何かで見た、恐竜の卵のようにも思えた。  僕は衝動的に、周りを見回して人がいないのを確認すると、そっとその卵を拾い、ジャケットのポケットに入れた。何の卵か調べてみたかったし、もし何か珍しい卵だったらお金になるかもしれない、なんていう気持ちもあった。  そのまま僕はそこから逃げるように去り、家に帰ろうと思ったのだけれど、突然、妄想が頭に沸いたのだ。ポケットに入れたこの卵から、何か恐ろしいものが出てきて、人々を襲い始めるのではないかという妄想だ。  なぜそんな妄想をしてしまったのかは分からないけれど、とにかく僕はそれで怖くなって、卵を元の場所に戻そうと思った。来た道を戻り、卵が落ちていた場所に着いた。そしてポケットから卵を出そうとしたとき、また妄想が浮かんだのだ。  ポケットの中の卵から、もうすでに何か恐ろしいものが出てきていて、ポケットに手を入れたら手を食いちぎられるのではないか、という妄想だ。そこでジャケットを脱いで逆さまにしてポケットから出そうと考えたのだけれど、それは危険だと気付いた。やはりポケットから出てきたそれが大きくなって人々に襲い掛かるのではないかと思ったからだ。  そして僕はそれを元の場所に返すのをやめ、人気のないさびれた公園に向かった。少子化のせいか、いつもほとんど誰もいない公園が近くにあるのだ。ポケットからそれが逃げて行かないだろうかと心配しながら公園に向かい、10分ほど歩いて公園に着き、予想通り誰もいなかったからほっとしたのだけれど、でも結局ここでも妄想に襲われてしまった。  ここで外に出したところで、それは大きくなってここからどこかに逃げてしまい、そこで人々に襲い掛かるのではないかという妄想だ。少し冷静に考えてみれば、そもそもそんなに恐ろしいものがポケットに入っているはずがないと思えるのだけれど、ポケットからそれを出そうと考えるたびに、そんな妄想が浮かんでしまうのだ。
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