みんなの令草さん

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「こちら、令草くん。こちら、(れい)ちゃん」 「初めまして」 「初めました」  学会で一人の女性を先輩に紹介された。 『初めました』なんて、おかしな子だな、と思った。でも赤くなったのは可愛かったな。 「麗ちゃん、明日は友だちと会うから、ご飯はいらないからね」 「わかったあ。じゃあ私は令くんのママとご飯食べてくる」  麗ちゃんと暮らし始めて1年。東京から友だちがわざわざここ札幌に来てくれたので、飲もうということになった。 「クリスマスイブなのに、奥さんに悪いよ」友だちは気にしたけれど、「大丈夫。あとで埋め合わせをするから」と言っておいた。 「麗ちゃん、ごめん。急患が入っちゃった」 「それは大変。しっかりね」  麗ちゃんは大学院を卒業してから民間の小さな医院で働くようになっていた。僕は大学病院に残り、夜勤もある緊急外来で働いている。 「麗ちゃん、来月、友だちから登山に誘われちゃった」 「登山ね。いい季節だから登山も楽しいだろうね」 「麗ちゃんも行く?」 「ううん。私は身体動かすのは苦手だから。令くん、お友だちと行ってきて」  激務の間を縫って、僕は独身の時からの趣味である登山を続けていた。
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