File 1

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依頼人が帰ると、里斗くんが机の上のカップを片付ける。 「いつまでその写真見つめとるん?」 探して欲しいと差し出された写真を睨みつけている平さんの前へと座るスバルさん。 改めて、俺も平さんの隣へと腰掛ける。 隣の彼は何も理解していないのか、それともフリか。 「なんでお前がそこ座るん?」 うん、フリではなかったようだ。 それを聞いてスバルさんが堪えられず、腹を抱えて笑い始めた。 これは長くなるぞ……。 怪訝な顔をする平さんが、説明を求めるようにこちらを見た。 「ホンマ、そんなんでよく探偵やってられるな、自分!レイちゃん居らんくなったら廃業やなぁ〜〜〜」 俺が説明を始めようとすると、スバルさんが平さんを煽った。 「玲音は居らんくならへんからええんよ、なぁ」 が、スバルさんの煽りは平さんには全く通じていなかった。 「ゾッコンやんwww」 この2人、微妙にズレてるんだよな、とため息。 「お疲れ様です」 そんな労いの言葉とともにコーヒーを出してくれた里斗くんに感謝。 うん、落ち着くいい匂いだ。 「で、本題なんですけど」 コーヒーを啜って落ち着いたところで、そう切り出す。 「この男について調べればええんやろ?」 カップをカチャッと置いたスバルさんが、先程渡したプロフィールをヒラヒラさせた。 平さんは、それが何かわかると、ギョッとした目でこちらを見る。 「依頼人の個人情報を!!」 そこでまた、はぁ、とため息。 「平さん、この()が本当にこの男の娘だと、証明できますか?」 「せやかて、まずは娘さん探さな。何か事件に巻き込まれてたら大変や。探してから本人に聞けばええやろ」 「だから、平行してスバルさんに依頼人のことを調べてもらうんです。娘さんの方は俺たちで当たればいいでしょ」 「そうやけど……」 「けど?少なくとも、あの男は何かを隠しています」 「なんでそないなことわかるんよ」 「あの男がその娘の後ろを歩いているのを見たことがあります」 「………っ!!! 」 「あの感じは親娘のそれではありませんでした」 まるでストーカー。 その言葉がしっくりくる。 そこら辺は勘でしかないけれど。
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