File 1

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清庵女学院まではそう遠くはない。 門の前に車を停めた平さんはあることに気がついた。 「このまま入ったら不審者やな」 「間違いなくそうですね」 いくら探偵とはいえ、学院の敷地内に勝手に入ることはできない。 女学院と名を打つお嬢様学校なら尚更。 「まずはお偉いさんにお願いせなあかんな」 「探偵です、調査させてください。ってですか?信じてもらえますかね?警察みたいに手帳のある国家公務員でもあるまいし。不審者として通報されるのとか、俺嫌ですよ」 「ほな、どないすんねん」 残念ながら清庵に関係するような知り合いもいない。 「少し離れたところに車停めてください」 もうすぐ授業を終えた生徒たちが出てくるころだ。 「平さんはここで待ってて下さい」 門が見える近くのパーキングに駐車した車内で、理由も手段も告げずそれだけ言って車を降りる。 「は?え、ちょっ!玲音!!ったく、勝手なんやから……」 2人で門の前にいても怪しまれるだけだし。 1人の方が都合が良い。 門の横の塀に背をつけて、スマホを弄るフリをしながら、ちらほらと出てきた生徒を伺う。 もちろん普段はいない男が門の横に立っている珍しさから、生徒たちもチラチラとコチラを気にしているが、決して目を合わせることはしない。 あくまで視線はの若く彷徨わせる。 「いた」 そして数通る女子生徒の中から、目的の人物を見つけた。 イジっていたスマホをポケットにしまい、彼女の前にスッと立ち、歩みを妨げた。 そんな俺の行動に、足を止められた向こうは怪訝そうな表情を浮かべる。 そりゃ、そうか。 「学校お疲れ様。さ、行こうか。鞄持つよ」 「えっ、ちょっっっ!」 反論される前に、半ば強引に鞄を奪い、手を引く。 あれ、これも犯罪の一種か、と思いつつも、説明すればわかってくれると信じて強硬手段。 とりあえず、誰にも聞かれないような場所で話をしなければ。 生徒のいなさそうな公園までくると、彼女の方からグッと俺の手を払った。 「な、な、な、なんなんですか、一体!?急に、こんな……。け、警察っ………!警察、呼びますよ!!」 スマホを胸に当ててギュッと握り、怯えた様子の彼女に申し訳なさが込み上げてくる。 そりゃ怖いよな。 しかも、後を追うように平さんまで公園に現れたら尚更。
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