96人が本棚に入れています
本棚に追加
スバルさんの案内(?)でやってきた依頼人の男性は、平さんの前に一枚の写真を差し出した。
この探偵社では、主に浮気調査、ペット探しや人探し、物探しを請け負うことが多い。
昨今では日本警察が大変有能なため、某ドラマやアニメのように探偵に事件がまわってくることはほぼない。
まぁ、行方不明の知人を探して欲しい、という依頼で事件に巻き込まれることはあるが、事件に発展した時点で管轄は警察となる。
我々の仕事はそこまでだ。
かくいう今回も、もう1週間姿を消している娘を探して欲しいという依頼だった。
「清庵女学院、ですか」
俺の言葉に依頼人の男性は目を見開いたが、驚くほどでも無い。
写真の少女はセーラー服を身につけている。
そもそも、この近辺でセーラー服の学校なんて最近だと数校しかない。
その中でも、襟元にラインが2本入っているセーラー服は、別名、金持ち学院と噂の清庵女学院しかない。
「最初は友達の家に泊まる言うてたんですけど、次第に連絡も来ぅへんくなって……。こちらから連絡しても既読にもならへんし、何かに巻き込まれてるんやないかと……」
「それは心配やなぁ」
うんうん、と頷く平さん。
そのまま乗り出して男の両手を握ると、一つ返事でその依頼を受け付けた。
次の瞬間には、ため息を吐く俺などお構いなしに、依頼料の説明をしている。
「全く……」
依頼内容の確認は終わったため、席を立ちスバルさんの座る社長席まで足を運ぶ。
「レイちゃんも大変やね〜〜」
「その呼び方、いい加減やめてくれませんか?」
「えぇやん。ヘイちゃんと一緒やし!まさか、それが嫌なん?」
別に……、と濁して依頼人が書いたプロフィールをスバルさんの前に置く。
「んもーーー、レイちゃんは人使い荒いんやから〜〜!ホンマに、どっちが社長かわからへんなぁ」
「では、よろしくお願いします」
スバルさんの俺に対する文句の小声と依頼人の言葉が重なった。
支払いに関する説明も終え、依頼が成立したのだろう。
依頼人の男性は顔に期待の色を浮かべて帰っていった。
さて、ここからが本題だ。
最初のコメントを投稿しよう!