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一通り騒ぎ倒した後、平さんが外出の準備を始める。
スバルさんはとうに社を出て帰っていった。
情報屋のあの人は別に拠点があるから。
「まずは清庵ですね」
平さんと同じようにコートを手に取り、停められた車の助手席に乗り込む。
が、どうしたのだろう。
ハンドルを握った彼が、車を発信させずにコチラを見ながら何かを考えているが。
「玲音、女子「流石にそれは無理ですよ」」
変なことを言い出しそうだったので、前もって否定しておく。
「まだ何も言ってないがな」
「だいたいわかりますよ、貴方のくだらない考えくらい」
どうせ女子校生に変装して潜入できないか、とかだろ。
「……、ちゃうし」
「じゃぁ、なんだったんです?女子?」
「女子、、、教員志願者」
苦しい嘘を吐く平さんにため息。
そもそも、教員免許などもってないし、それなら、女じゃなくてもいいだろう。
しかも、女だとしても教員志願者を女子とは言わない。
「別にそのまま聞き込みに行けば良いじゃないですか。失踪している子を探してる、探偵ですって」
「あかんやろ!」
「なんで……」
「女子の中に入ったら、自分モテるやん!あんな女豹達の中に玲音を放り出せん!」
「………」
呆れて反論を辞め、正面を向いて深くシートに腰掛ける。
くだらなっ。
そんなのアンタの方がだろ。
ハンドルに肘をついていまだに何か考え中の我が社の社長に、前を向いたまま口を開く。
「男子校にはゲイやバイが多数います。同じように女子校もレズビアンが多いのではないですか?そんな子たちは俺なんかに興味持ちませんよ」
普通なら、そんなわけ、となるところだが。
「いやに詳しいやないの」
「実体験ですから」
正確には、全ての生徒の性的指向が同性なわけではないし、その環境下での一時の気の迷いや娯楽の一種にすぎないと捉える人も多くいる。
でも、そこまでは言わない。
何故なら。
「ほな、大丈夫そうやな。そうと決まればさっさと行くか」
隣の彼はそう言ってサイドブレーキを外し、ギアをドライブに入れて車を進めた。
単純で何よりだ。
単純すぎて心配になってしまう。
よくこんなんで探偵なんてやろうと思ったよな。
騙されて利用されて終わりだ。
まぁ、俺が隣にいる限りそんなことは決してさせないが。
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