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本棚に追加車に乗り込むのを斑目さんが見送る。
警察の前では流石に大人しくしていたこの人も、車が走り始めればすぐに化けの皮を剥がした。
「さて、玲。言い訳、聞いてあげようか」
そう言いながらキチっと締めていたネクタイを外す、シュッという音が聞こえた。
目を閉じているため、耳からの情報が嫌に入って来る。
なるべく離れるために、できるだけドアに寄って窓に頭を預けているのだが、そんな頬にヒンヤリとした冷たい手が触れる。
「相変わらず、車はダメなんだね」
返事をせず、無視を決め込んでいるのだが、特に怒った様子はない。
手から逃れるため緩く首を振り目を開けた。
ネクタイとワイシャツの上の方のボタンをいくつか外して着崩した姿は、先ほどの蘇芳環の姿とはほど遠く、男の色っぽさが存分に垂れ流れている。
そんな彼の欲情した目が俺を見下ろしていた。
『心配する優しい兄』なんかではない。
異母弟に欲情する、俺の初めての男。
だから、逃げたんだ。
この男から。
俺に向けられる優しさや愛情は、兄弟のそれではない。
歪んだ、執着。
平さんに向けた視線は、弟を心配してのそれではない。
狂おしいほどの嫉妬。
この男には、あんな探偵事務所なんてどうにでもできる力がある。
だから。
見つかった時点でゲームセット。
今までよくバレなかったと思った方が良いのかもしれない。
「平さんには、手出さないで」
俺が言えるのは、言いたいのはそれだけ。
俺が守りたいのはそれだけ。
「まさか、他の男を庇う言葉を聞く日が来ようとはね。それが火に油を注いでいるのがわからないかな?それとも、わかっていて、あえて言ってる?お前は賢いから」
そうだよ。
怒らせるのなんてわかってる。
それでも、言わなきゃいけない。
『俺はアンタのモノになるから、あの人には手を出さないで』
なんていう交換条件。
平さんが知ったら怒るかな。
でも、俺はあの人に愛されるほど綺麗じゃないから。
「あの男に許してなんかいないよね?」
鋭くなった視線を真っ直ぐ見つめて首を振る。
許してない、と伝えるために。
それを受けて、口元を緩めた彼は手を腰に回していやらしく撫でると、視線を合わせたまま、無遠慮に唇を落としてきた。
「そう。でも、ちゃんと確かめないとね」
そう言葉を残して。

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