【1】私の人生は生まれる前からギャンブルだった。

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 わかりやすく説明すると、ド田舎の、名家というものの出身だ。小説やアニメに登場するような、昔ながらの旧家である。高台に家がある。何かと家柄重視の家だった。そのため、基本的には、母の出身地域で権勢を振るっていて、必ず誰かは家を継ぎ、他の人間は地元国立大にばかり進学し、その後は本家周辺に戻ってきているような一族である。例外は、お嫁さんとして嫁ぐ場合だけだが、大半の場合は、婚姻も地元で結ぶことが多かったらしい。母が少ない一部の例外だっただけである。  母も、当時は学歴主義だった。それも、地元国立大などでは自分で自分が許せないという人だったのである。そのため、とある頭の良い大学へと進学し、東京に出た。そこで父と知り合ったそうだ。父も、頭の良い大学を卒業しているのである。この頃の母は、ちょっと有名な公務員になるつもりだったそうだ。母の実家が、とある国会議員と親しかったこともあり、そちらの方面に進むつもりだったらしい。ようするに官公庁に行こうとしていたのだ。上級公務員というのであろうか。  だが母は、父との出会いで恋愛脳になってしまい、父が数年後、実家へ戻る時には、一緒に結婚して、その土地へと行くことに決めたそうだ。母は堅実な人だからなのか、大学時代に教員免許を取得していたそうで、どこへ行っても働ける自信があったのだという。  最初は非常勤講師でもやるかと母は考えていたそうだ。  その際、国会議員から電話が来て、某学校への採用を自分の権限で頼んでおこうかと言われたらしい。多分、母方の祖父が連絡したのだろう。しかし母はこの当時、非常にプライドが高かったため、お断りしたそうだ。そして別の学校に、見事に働き口を見つけた。この時から、母はコネが大嫌いになったようである。  その内に、私ができた。母は既に本採用されていたので、近々産休を取ることになった。近隣に産婦人科が無かったらしい。また、父も比較的この頃は在宅で仕事をする機会が多くなっていたため、某地方都市へと二人は何度か通ったそうである。それからしばらくして、母が妊娠中毒症等を罹った。少しだけ、他の病も見つかった。この結果、堕胎を勧められたそうだ。  つまり――私は、子宮内にいた頃から、人生がギャンブルだったのである。  私がこの話を詳細に知っているのは、何度もしつこく聞かされたからだ。
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