【1】私の人生は生まれる前からギャンブルだった。

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【1】私の人生は生まれる前からギャンブルだった。

 ――実は、私の人生は、子宮内からギャンブルだったのである。  まず、少し私の生い立ちを書いてみる。比較的ありがちだと私は思うが、幼馴染連中に言わせるとそうでもないらしい。それに、いつか書こうと思っていた事柄でもある。  私の父親は、よくある田舎の落ちぶれた地主の家に生まれた。  祖父の時代くらいまでは、ある程度裕福だったようだ。  しかしそこは、特別問題ではない。  ――頭がおかしい人が多いのだ。  遺伝可能性がある精神疾患を代々持っているという意味ではない。   興味があるものにトコトン走ったり、趣味を追求する人間が多いのだ。  今でも曽祖父の蔵書等が残っているが、明らかに当時翻訳されたばかりだった洋書などが残っている。これは例であり、もっと意味がわからない本が、大量にある。そして彼らは皆、多くの事柄を追求するため、歴史の教科書に載る偉人達が大学を設立した段階で、そこに入学を果たしていたりする。偉人と一緒に撮った写真まで残っている。中にはそのまま、偉人としての道を邁進した者もいる。  なお私が歴代から唯一遺伝したと考えられる事柄――それは「あきっぽい」点だ。  たいてい全員が、兄弟同士で家を継ぐのを押し付け合い、起業しまくっていたようだ。  そして重要なことであるが、それにすら途中であきる人も多く、続いたとしても大体失敗していたのである。起業までは成功するのだ。しかし、ほとんど潰れている。  それも我が家が落ちぶれていった一因だと考えられる。  みんな際限なくお金を使った。  ただ、中には成功して、今でもそれを家業にしている人もいる。  例えば、伯父夫婦は病院を継いで、従兄も医師だ。  長らく病院を経営しているし、その地方に住む親戚達も何人か医師がいる。  伯父は、とても真面目な人である。そして、私の父も真面目だ。  これを考えると、祖父の教育が良かったのだろう。  祖父は私が幼い頃に亡くなったが、覚えている限り、とても厳格な人だった。  なお父も、私の出身地では珍しい、比較的堅い職業に就いていた。煙草なんて、一切吸わない。健康にも気を遣う人である。もっとも、親戚一同の中で喫煙者は私だけであるが。  続いて母方について。こちらは、おそらく父方よりは、まともだろう。
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