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48.リターン※
「………っふ…んん、」
何度も唇を合わせると自然と声が漏れた。
ダリアは器用にキスをしながら僕のシャツのボタンを外していく。肌に触れる狼の手は熱でもあるのかと疑うぐらい、熱かった。こうして触れ合いのは本当に久しぶりだ。
「ヒューイ……手…」
「ん、ごめん……っ!」
早くもっといっぱい気持ちよくなりたくて、僕の手は自然と自分のものへと伸びていた。
親指と人差し指で輪っかを作るとカクカクと擦り付ける腰が止まらない。情けない僕の姿を見下ろして、ダリアが息を呑む様子が見えた。
羞恥心よりも快感への期待が勝っている。
もっともっと、早く。
「ダリアの…触っても良い?」
ズボンの膨らみに手を添えて聞くと、ダリアは黙って頷いた。そのままベッドに腰掛けてくれるから、僕は床に手を突いて彼の脚の間に入る。
久方ぶりの雄の匂いに、唾を飲み込んだ。
毎日のように愛し合っていたあの頃がすでに懐かしい。僕はこの狼に優しく抱かれて眠りに落ちるのが好きだった。抱き締められると安心した。一人ではないと思えた。
「………っ…ヒューイ、」
「裏舐めるの、すき…?」
「ぜんぶ、良いよ。お前のはぜんぶ気持ち良い」
「………ッ!」
ダリアのものを舐めながら自分の分身を慰める。
彼と出会う前の自分が見たら赤面して止めに入るだろう。
僕は、ダリアと出会って随分と変わった。
生に対する執着心が生まれた。これまでべつにどうってことなかった自分の人生に、何か、意味のようなものを求めるようになった。
他人に対して、期待するようになった。何かを望むことなんて許されない人生だったのに、僕はこうして今も、ダリアに甘い見返りを求めている。僕が彼に与える分だけのリターンをご褒美として欲しいなんて、思ってる。
後孔に手をやるとヒクッと身体が震えた。
ここまで来て僕は、香油がないことに気付く。
「だ…ダリア、どうしよう……香油ない!」
「大丈夫だ。痛くないようにするから」
そう言って狼は慌てて立ち上がった僕を抱き上げた。
ぽすっとシーツの上に僕の身体が沈む。
大きく開脚された脚の間にダリアは顔を近付けた。
「………っあ…!?」
舌が蕾を押し広げるように入ってくる。
空いている手でくにくにと胸を弄ばれると、痛いぐらいに自分の分身が勃ち上がるのを感じた。
「透明なの出てる、気持ち良い?」
「んっ!気持ちぃ……あ、あぁ…ッ」
「ヒューイ、ごめん…もう…」
「……っ…うん、」
ぐちゅっと押し当てられた先端はダリアが十分に解してくれたおかげか、比較的すんなりと入った。
僕はこうして大きな狼に抱き竦められながら、彼の余裕のない顔を見るのが好きだ。きっとダリアに言うと恥ずかしがるし、言葉で伝えると上手く伝わらないと思うんだけど。
堪らなく、愛されてると感じる。
何度も抽挿を繰り返すと身体全体がジンジンと熱くなった。ベツィアナ宮殿で貴族の男に甚振られた時とは全然違う。僕はもっと、もっと、と求めている。自分から腰を振って、一瞬たりともその甘い快楽を逃さぬようにと。
「……ヒューイ、力抜け…ッ」
「ごめ…僕、気持ちいいの止まらない……っん!」
自分の意思ではどうにもならないぐらいヒクついてしまうから、それはきっとダリアを苦しめているのだろう。申し訳なく思って見上げた先に、額から汗を流す狼の姿を見た。
「ダリア、我慢しないでね…いっぱいして」
「………っ…煽るな、」
「んあ……!?」
浅いところから一気に深く刺さった剛直がグリッと最奥を擦ると、僕は呆気なく果てた。ダリアも限界だったのか、勢いよく放出された熱が腹の中に広がるのを感じる。
僕たちは何も言葉を交わさずに、ただ寒さから逃れるように抱き合って眠った。もしくは、本当に目を背けたかったのはこれから訪れる現実だったのかもしれない。
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