泣けない

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 窓を外を見ると雪は散らついたままだ。燈矢と明美はまだ続けている。何か胸の中がモヤモヤする。あの表情に何かありそうだとまだ話してもいないクラスメイトが気になってしまう。 「ほら。もうみんな座れ。また斎藤先生怒るぞ」  委員長の裕介が僕らを促す。僕らのクラスは全員で十二人。入学したときは二十人だった。卒業までの間にまた誰かいなくなる可能性もある。だからこそ新しい仲間は嬉しいのだ。  始業のチャイムが鳴る。流石に新しい仲間が来た朝に怒られたくはないのか、みんな大人しく席に着く。しばし待つこと教室の扉が開き斎藤先生が現れる。 「おはよう。今日はみんな大人しいな。まぁ猫被ってるだけだろうが」  斎藤先生は相変わらずの毒舌だ。毒舌だけど、斎藤先生のことはみんな好きだ。怒りやすいが愛があるって知っているんだ。 「さて、みんなお待ちかねの転校生だよ。拓真、入っておいで」  廊下からはいと透き通った声が届き、お待ちかねの転校生が現れる。長く細い手足。白い肌。大きめの黒目に色素の薄い赤く見える髪。 「拓真くーーん!」  明美がアイドルでも呼ぶかのように叫ぶ。 「おほん。明美、そういうのはあとでな。知っている人もいるだろうが、横山拓真くんだ。三学期だけ、一緒に学ぶことになる」 「横山拓真です。皆さん、よろしくお願いします」  ニコニコとした表情のまま、拓真は頭を下げる。きっといい奴なんだろうが僕はどうしても引っかかる。 「誰か拓真に学校を案内してくれないか?」 「はい! 僕やります!」  真っ先に手を挙げる。みんながきょとんと僕を見つめていた。 「私やりたかったのに!」  明美が悔しそうに叫ぶが早い者勝ちだ。 「じゃあ雄斗頼む。仲良くしてくれ。席も雄斗の隣にするか」  斎藤先生は教室の一番後ろにあった机を僕の机の横に移動させる。 「雄斗よろしく頼むな」 「はい! 僕は荒川雄斗。拓真よろしく!」 「よろしくね」  拓真はニコニコした顔を僕に向けて手を差し出してきた。その手を僕はギュッと握る。 「仲良くしようね」  僕は僕の違和感が正しいかどうか知りたかった。わざわざそれをつつくのは拓真はイヤかも知れないが、それを知らなければ僕らは拓真と仲良くなれない気がする。一緒にいられるのは三学期の間だけ。だからといって当たり障りのない関係なんてイヤだ。どんな事情があっても拓真はもう仲間なんだ。
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