妻に会いたい

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私の名前は『佑月(ゆづき)』、58歳の平凡な会社員だ。 私には『紗季(さき)』という妻がいたけれど、紗季は28年前の出産直後に天国に旅立ってしまった。 その時に出産した子供は女の子で『乃愛(のあ)』と名付けた。 乃愛はすくすくと成長して28歳になった今年の6月に『泰智(たいち)』君と結婚した。 乃愛は結婚して家を出たため、今私は1人で生活している。 この28年間の私は男手1人で子育てに奮闘し、乃愛の成長をずっと見守ってきたけれど、乃愛が結婚した今は1人になって少し寂しい感じがしている。 この28年間を振り返ってみると乃愛の子育てに精いっぱいで、とても自分の時間を持つことができなかった。 しかし今の私は、今までの人生を振り返る余裕もできた。 乃愛が結婚して1人になった私は何をしたらいいのかも分からない状態だったけれど、私は紗季との短すぎる結婚生活が懐かしく思い出された。 1人になって寂しい私は、紗季とまた会いたいという思いが強くなって、夜眠りにつくと夢に紗季がよく現れるようになった。 私は日増しに寂しいと思う感情が大きくなっているように感じていた。 寒さが増してきた12月の金曜日、私は会社の仕事を終えて自宅に帰り、1人で夕食と風呂を済ませてビールを飲みながらパソコンでインターネットのSNSを見ていた。 私の会社は土曜日日曜日は仕事が休みのため、金曜日の今日は少し夜更かししても良いと思いながらパソコンを操作していた。 SNSでフォローしている友人の記事を読み進めていると、私はある記事が目に留まった。 その記事というのは、『再会の館』という写真館のようなお店があり、このお店では天国に旅立った大切な人と再会することができると書かれていた。 私はその記事を読み終えると、さらに関連する記事を検索して読み進めてみた。 するとやはりどの記事にも天国に旅立った大切な人と再会することができると書かれていた。 私は信じられない思いが強かったけれど、明日は会社の仕事が休みであることから、明日ぶらりとその『再会の館』という店に行ってみようと考えた。
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