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部屋に老紳士が入ってきて、部屋の外のテーブルとソファーがある場所に案内してくれた。
「少し落ち着きましょう!
コーヒーか紅茶お入れしますが、どちらがよろしいですか?」
私は涙で震えた声で答えた。
「コーヒーお願いします。」
老紳士はコーヒーを出すと店の奥にあるカウンターの椅子に座って、コーヒーを嗜みながら小説を読みはじめたようだった。
たぶん、私を独りにしてくれるための配慮だと思う。
涙をぬぐって老紳士からいただいたコーヒーを飲むと、それはとてもおいしくて私の気持ちは少しずつ落ち着きを取り戻していった。
私は紗季と話ができたことで、心が洗われたようなすっきりとした気持ちになっていると感じた。
コーヒーをいただいて涙が止まって気持ちが落ち着いたところで、店の奥のカウンターに座っている老紳士のところに向かった。
「妻と話ができて本当に良かったです。
ありがとうございました。」
私が丁寧にお礼を言うと老紳士から、
「こちらこそ、ご利用いただきまして、ありがとうございました。」
とお礼を言われた。
今回のことで、私は老紳士自身のことが気になり、質問してみた。
「神木さんは、奥様と再会されたのですか?」
すると老紳士は、少し恥ずかしそうに、
「まだなんです。
妻と何を話したらいいのか、心の整理ができていなくてね!
でも、いつか私も妻と再会したいと思っているんですよ!」
と、笑顔で話してくれた。
店を出た私は、紗季のお墓参りに行こうと思い立った。
紗季に自分の気持ちを正直に伝えることができた今日の出来事は、一生忘れることはないだろうと思った。
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