妻に会いたい

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翌日は、少しゆっくり起床して朝食を済ませてから家を出た。 『再会の館』という店は東京都内の池袋駅で下車して、東口から徒歩で15分程のオフィス街の一角にひっそりと佇んでいた。 周りは近代的なオフィスビルであるにもかかわらず、ポツンと昭和初期の時代に建てられたような木造の店があり、そこだけ異様な雰囲気を漂わせていた。 店の外側にあるディスプレイにモノクロの古びた写真が飾られていて、そこには着物姿の美しい女性が写っている。 一見、少し古びた写真館のようだが、外からは何の店なのかよくわからない。 店の看板らしきものには、『再会の館』と書かれていた。 私が店の中に入ると、奥のカウンターに店主らしい老紳士がいて、椅子に座ってコーヒーを嗜みながら小説を読みふけっているようだった。 老紳士が私に気が付かないようだったので、おそるおそる声をかけた。 「すみません」 老紳士は私に気が付くと立ち上がって、 「いらっしゃいませ」 と、ゆっくりと丁寧な口調で笑顔で挨拶してくれた。 老紳士が私に近づいてきたので、私は店に飾られていた写真が気になって質問してみた。 「お店の外側に飾られている写真に写っている着物姿の美しい女性は、どなたですか?」 老紳士が少し恥ずかしそうに話してくれた。 「あぁ、私の亡き妻なんですよ!  ここは以前は写真館でして、昔のまま飾ってあるんです。」 私は外から店を見た時、少し古びた写真館のようだと感じたことに納得した。
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