蜜愛03 相惚

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 柊二がゆっくりと動き出すと、野乃花の機微がまた変わる。 「っ、しゅう…」 「野乃花はいつも正直だけど、身体も正直なんだね。欲しがりさんは好きだよ?」  自分はそんなつもりはないのに、身体が柊二の熱を引き戻そうと動いているのが自分でも分かった。  そして、先程まで感じていた圧迫感は消え、柊二が出入りするたびに、  甘美な刺激が皮膚を粟立ててくる。 「…ぁ」  艶のある声が零れだす。  野乃花は、その声を抑えることが出来なくなった。 「野乃花、何もかも我慢しなくていい。どれもこれも、俺にとっては可愛いだけ。野乃花のイイところは分かってきたから、何度でもイクといい。もう、俺も我慢の限界。身体も馴染んだようだし、たくさん可愛がってあげるから」  その言葉以降、野乃花の記憶はぷっつりと無い。  ただ、柊二から与えられた強すぎる刺激が、  全身を電流のように駆け巡っていたのは覚えている。  そして、 「野乃花」  何度も甘く、甘く囁かれた、自分の名前。  その名前を柊二の声で囁かれると、  それだけで身体が歓喜に震えた。  彼、  藍沢柊二は水瀬野乃花の男。  そして、自分。  水瀬野乃花は藍沢柊二の女になった。  自身の恋の成就を成し遂げた野乃花は、  その幸せを噛みしめた。 「野乃花、愛してるよ」  その言葉に、自分も、と返したかったけれど、  容赦ない穿ちに、パチンとナカが一気に弾け、  野乃花はそのまま意識を飛ばし、朝まで起きることが出来なかった。 □◆□◆□◆□  翌朝、野乃花が目が覚めると、柊二は既に起きていた。 「おはよ。野乃花」 「………ぉはよぅ…ございます」  起きた状況が、とんでもなく恥ずかしくなる。  二人は、昨日のままの状態で、  野乃花は、柊二の腕枕で懐に包まれていた。 「野乃花、真っ赤」 「……だって、そのまま寝ちゃってるし、最後の方は記憶がないんです」 「そうだね。昨日は野乃花、盛大にイッて、意識飛ばしちゃったから。もう少し寝てても良かったのに。寝顔、可愛かったよ?」 「……っ」  柊二の甘々なひと言に、恥ずかしいやら何やらで、さらに顔を赤らめる。 「よし、目が覚めたみたいだから、とりあえず汗を流そう」  そう言って、柊二が野乃花を横抱きに抱え上げようとする。 「…っ、あの、歩けますからっ」 「野乃花、無理だよ。足腰立たないはずだ」  そんな訳ないと、野乃花はベッドから降りるのだが、 「きゃぁっ」  柊二の言った通り、野乃花はベッドを降りた途端、  腰が砕けてぺたりと床に座り込んだ。  立ち上がろうと奮闘するが、身体が言う事を聞いてくれない。 「…何で?」 「ほらね?立てなかったでしょ?」  柊二はくすくす笑いながら、野乃花を子供のように抱き上げる。 「…すみません」 「謝らなくていい。昨日は俺が、野乃花に無理をさせたからね。だから、ちゃんとお世話してあげるよ」  不穏なセリフを吐かれた。 「えっ、柊二さんっ…それはっ」 「はー、可愛いねぇ。野乃花は本当に」  結局、野乃花は抵抗虚しく、  柊二から甲斐甲斐しく、お世話される羽目になった。  ちなみに、野乃花が持っていた箱。  その中身は、1つも残っていなかった。 「柊二さんは、おバカさんですか!?」 「十数年振りの逢瀬は、思った以上に俺の中の『雄』を煽ってきてさ、抑えがきかなかったんだよ。野乃花は可愛いし、止まれなかった」  爽やかに、にこやかに。  色気を撒き散らされながら、柊二にさらりと言われた。  空っぽの中身のない箱と柊二を見て、  あんぐりと呆れるしかない、野乃花だった。
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