賑やかな夕食時

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賑やかな夕食時

料理を運んでいれば、隊長さんたちが腰かけているテーブルを見つける。 「お代わりもありますから、たくさん食べてくださいね」 無事に物資が到着してよかった。物資についてはこちらや周辺の街へのものも含まれていたから、仕分けもお手伝いした。 やはり王都からの物流が滞った影響らしい。 しかし隊長さんたちが魔物の巣を潰さなければどうしようもない。 「あの、隊長さんもどうぞ」 目の前に料理を盛った皿を差し出せば、スプーンはつけてくれるらしい。本日のメニューはシチューに、野菜や肉料理を追加で用意できた。もちろんシチューに合いそうな硬めのパンもある。 それから真向かいに座る副団長さんにも料理を盛った皿を差し出す。 「いやぁ~、愛妻料理だねぇ~~。微笑ましいなぁ、隊長ったらっ!」 その話、副団長さんまで!? 「お前なぁ。変なこと言うな。シェリカが困ってるだろうが」 隊長さんは副団長さんを呆れたように睨んではいるものの、ちゃんと食べてくれてる。 「因みに俺も未婚なんだー!」 と、副団長さんが教えてくれる。あ……それはヘレンお姉さんたちも言っていたっけ。 「隊長がいいなら、愛妻料理だと思って食べよっかな~~」 はいぃっ!?副団長さんったら、いきなり何を……っ!? 「お前な。それはやめろ。後お前のアニキにチクるぞ」 「ごめん、それはマジで勘弁して。ほんと悪かった」 ヘラヘラしていた副団長さんが一瞬にして真顔で大人しくなった!?副団長さんのお兄さんって一体どんな方なんだろう……? しかし副団長さんはすぐににへらっとしたもとの表情に戻る。 「そうそう、シェリカちゃんの仮入団申請、一緒に騎士団長宛に魔法で伝令送ってあるから安心してねぇ」 「は、はい!ありがとうございます!」 公爵さまお抱えの騎士団だもの。無許可で同行って訳にはいかないわよね。 しっかりと公爵さまに許可をとらないと。しかし……申請は本名のはずだ。 平民ならば苗字がないこともあるから、苗字を詳しく聞かれはしなかったが。 ――――いや、下の名前で私だと気付くってことも、ないわよね……? それに吹雪の中でひとり行き倒れそうになっていた……一応平民と言う設定の私を……気にするわけもないと……思う。 「魔法伝令って見たことある?ひとつ見せてあげようか~!」 と、副団長さんが不意に告げる。 「えぇっ、魔法伝令をですか!?見たことはありますけど……その……」 何の用もないのに出していいものなのだろうか……? 伝令は魔法でも出せる。いや……こう言う現場とのやり取りは魔法の伝令が多い……かな?その方が確実に届くし、伝令文を開ける人間も限られるから機密情報保持にも有効だ。 ――――因みに開ける人がいなければ……出した者に戻ってくる。あまり想像したくはない状況だが。だけど……圧倒的にその方が速いのよね。 でも……。 「用がないのなら、迷惑になりますよ」 「いやいや、今ここで隊長に送り付けるからへーきっ!」 副団長さんがにへらっと笑う。いやいや、それはいくらなんでも!一応魔力は微弱ながら使うわけだし……っ! 「なら、俺はその件をお前のアニキに送ろうかな」 「いやいや、それはやめて~~っ!確実にお兄さまからお怒りの魔法伝令飛んで来るよぉ~~っ!」 ふ、副団長さんったら……。お兄さんの話題を出されると本当にあくせくしてしまうようだ。はて、やはりどれだけ恐い方なのか……気になるけれど。でも、隊長さんも本気ではないのか、そんな副団長さんを見て苦笑する。 「じゃぁ魔法伝令で遊ぶな」 「分かった分かった~~!やらないから」 副団長さんが慌ててそう告げる。 「そんで、ニキアスはなんて?」 「あぁ、団長ね。さすがに討伐中だから即……とはならないけど、人員はいるに越したことはないもん。今は隊長と俺の許可があるから同行もできるし、俺たちの推薦だから問題なく許可される見込み」 「ありがとうございます……!」 出会ったばかりなのにありがたい。 何と言うか、騎士団の雰囲気も、地元の奥さま方も、何だか温かい。それが北部の風土なのかもしれない。 「それにせっかくの付与魔法使いだからとルカが張り切ってたし」 「それは……っ。お役に立てればいいのですが」 あの後も普通の有り合わせのポーションの材料でルカさんに勧められるがままMPポーションや、他の状態異常用ポーションも補充したのだ。 「もちろんだよ。シェリカちゃんのポーションすごい効きが良かったよ~~。この隊長も普段は肉が裂けても唾つけときゃ治るとか言ってるくせにちゃんと使ってたし。良かった良かった」 ……はいぃっ!? ちゃんと使ったとは言っていたけれど……! 「あ、あの……隊長さん……!怪我をしたらちゃんとポーション使ってください……!私、これからもいくらでも作りますから……!必要なものがあったら言ってください!」 「ほら、シェリカちゃんのお手製なんだからさ。ね?」 と、副団長さんが隊長さんに笑いかける。 「そうそう。隊長に何かあったら、せっかく安定した北部が後継者問題で荒れるじゃん。隊長の肉親はセルくんだけなんだよ?」 「……わぁったよ」 ぶっきらぼうな答えだが……。 んーと……北部が荒れる後継者問題って何だろうか……。それもアイスクォーツ公爵領内……ってことよね……?隊長さんは公爵さまに継ぐような名家のご出身ってことなのだろうか……? でも隊長さんがしっかりと傷を癒してくれるのなら、安心できる。やっぱり……隊長さんは遠征隊に於いてもかなめであると分かる。後方支援部隊にいようとも、前線を率いているのは隊長さんだ。 ――――副団長さんもいるのに、相変わらず謎だが。 「んで……お前、飯は?」 「こ、これからです……!」 「じゃぁここで食え」 「へ……!?」 突然の誘いに驚いていれば。 「あら、そうなの?じゃぁ、これね」 「隊長さんがめっずらしい~~」 「明日雪が降るんじゃない?」 「いや、それ通常だから!」 一緒にご飯を運んでいた後方支援部隊のヘレンお姉さんたちが夕飯を渡してくれて、にこやかに笑いあいながら次のテーブルに向かってしまった。 「あの……っ」 「たまにはいいんじゃない?」 副団長さんがにこやかに告げる。本当に……隊長さんたちと一緒に……いいのだろうか? 「ほら」 しかしその時、くいっと腰を引き寄せられ、ぽすんと椅子に腰掛けさせられた!? 「ひゃ……っ」 「あははは――――。こりゃほんとに明日雪降りそう」 いや、副団長さん……。お姉さんたちが言ってたようにそれ通常運転では……? しかし……その、むげに断るわけにも行かないし……嫌でも、ないから。 大人しく食べ始めれば、腰に回された隊長さんの手が外れる。やっぱりこれで……良かったようだ。 みんなでご飯を食べる……と言う体験は、王城ではほとんどなかったことだから。むしろ部屋でひとりで食べていたことの方が多い。 こう言う賑やかなのもなかなか、悪くはない。 暫くするとアセナさんとルカさんも来てくれた。 「多分明後日くらいには帰れるよ。隊長が絶好調だからね」 「それは何よりです!」 隊長さんも元気、王都からの物流も復活する。 公都に早くつけるのは……いいことなんだろうけど、でも少しだけ寂しい気が……。 「効果倍増ですねぇ。もうちょっとかかると思っていたのに」 クスクスとルカさんがこちらを見て微笑んでいる……? 「なかなかいいと思わないですか?」 「こら、野暮よ、ルカ」 アセナさんがルカさんの手をぺしっとはたく。 「あの……アセナさんとルカさんって、仲がいいですよね」 そう言えば距離が……近い……? 例えば幼馴染みとか……。 「あ、それは……アセナ、言ってなかったんですか?」 「ルカこそ、言ってなかったの?」 ……あれ? 「私たち夫婦だよ」 アセナさんからの言葉にびっくりする。そう言えば、ポーションに詳しい旦那さまって……、ルカさんのことだったんだ……!
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