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王妃
――――久々の王城は……今もなお変わらない。華やかに見えて、その中では修羅場が繰り広げられることも少なくはない。
華やかなパーティーの裏では王妃が侍女を何の理由もなく叱りつけ、クリスティナは自分よりも目立つ令嬢がいると癇癪を起こし、王太子殿下が頭を抱えている。
それでもなお、王城はそ知らぬ顔で王都の主役のとしてそこにある。……まるで陛下みたいだわ。
王城も陛下も。その本音は誰も知らないのよ。
「クリスティナなら部屋か茶会か……その可能性が高いけど」
「それならアレスに任せておけ。すぐに分かる」
え……?やはり辺境伯さまの弟君。高位貴族だし顔が広いのかしら。気が付けば側にいないし……一体どこへ……?
――――そして数分後。
「おっ待たせー!王女サマの居場所、分かったよ!」
ケロっとした表情の副団長さんが戻ってきた。えぇ、もうっ!?
「ほんっとお前……詐欺師の才能ないか」
「酷くない?これでもお兄さんは清く正しくをモットーにしています」
「嘘つけっ!」
いや、その……やはり副団長さんって何者……?本人に聞くのも……どうかしら?いつか辺境伯さまに聞く機会があれば教えてくださるかしら……。でも、過保護な面もあるし……。
「んで?場所ってーのは?」
「それね。阿婆擦れお姫さまは、城の薔薇庭園にいるって」
「あ、阿婆……っ」
間違ってはいないのだけど、言い方が辛辣よねぇ。……反対はしないけど。
「全くこの顔面詐欺師め、良くやった!」
レクス!?それは褒めてるの!?しかも顔が広いんじゃなくて詐欺師だったし!
「あっはは~!褒めてもらって嬉しい!」
本人が喜んでいるのなら……いいのかしらね……?
いや……本当に詐欺師なわけはないと思うし……比喩よね?だとしたらどんな比喩なんだと言う話だが。
「よし、早速行くぞ」
「えぇ、クリスティナがいそうな薔薇庭園はこっちよ!」
王城広しと言えど、クリスティナになるべく遭遇したくないからこそ、そこら辺の場所はおさえてあるのよ。
そして目当ての薔薇庭園に近付けば、甲高い怒声が響いて来た。
『…………っ、……の、せいでっ!お兄さまにも怒られたじゃない!どうしてくれるのよ!』
「間違いない。クリスティナだわ」
お兄さまと言うのは間違いなく王太子殿下のことである。クリスティナたちの横暴が公平なあの方の耳に入らぬはずがないのだ。
これまでも再三に渡って注意を受けながらも、クリスティナは王族の権威を盾に同じような横暴を繰り返す。
「ふん……っ。あの女かっ」
そしてレクスは嫌悪に滲んだ表情を浮かべる。
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