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「あの、付与ってどうすれば……」
「うーん、無意識にやっていたなら……念じれば付きます」
「そんなチートな……」
「いえいえ、チートですから」
え……?本当に……?しかし念じればポーション瓶が光り、きれいなアイスブルーに染まる。
「この模様は初めてです」
「えぇ、北部以外ではあまり目にしないポーションなんですよ。因みにこちらが凍傷用」
続いてルカさんが出したポーションは真っ青である。真っ青って知られざる不味さ……と聞いたことがあるような。
「騎士たちが結構使うのでたくさん用意しときましょう。あと軟膏も」
「そう言えば軟膏もありましたね」
昨日塗ってもらったっけ。
「えぇ。ポーションを配合して作ります。そちらもやりましょうか」
「はい!」
ポーションを作り、続いて軟膏に配合していく。その最中、ふとルカさんが思い出したように口を開く。
「あ……そうそう、あと隊長はたまに裂傷負って、止血とばかりにわざと凍らせて帰ってくるのでその時は容赦なくポーションぶっかけてください。かければ氷も溶けるので。あと止血代わりに凍らせるとか危険すぎるので絶対に真似しないでくださいね」
「いや……真似はできませんけど。……あの……隊長さんはそれ大丈夫なんですか……?」
ただものじゃないことは分かっているけれど、そもそもの規模が違いすぎる……っ!
「普通なら大丈夫じゃないので、容赦しなくて大丈夫です」
ルカさんは容赦のない鉄壁の笑みを浮かべた。ビクッ。
「早く身をかためてくれれば少しは気にかけるでしょうかねぇ。立場上も、それが北部のためですし」
騎士団の中では隊長さんと言う立場だけど……でも、並々ならぬ実力を持っている……それは分かるものね。だからこそなのだろうか。
「でもあのひと、縁談が来ても突っぱねているんですよねぇ」
何だかその様子が想像できてしまう。出会ったばかりなのに、不思議だ。
「さて、気を取り直して~~、次はこれを作りましょう」
「は、はい……っ!」
そうして私はポーション作りに精を出した。
※※※
――――日暮れ前。
「お、お帰りなさい!」
隊長さんたちが帰ってきたのを出迎える。作ったポーションなども前線に送ってまもらったが、足りただろうか。
「……お前……」
隊長さんが私の姿に気が付き、口を開く。
「シェリカです!」
「……そうか、シェリカか」
口数は少ないけど……やっぱり恐いひとではないと言うか……。あ、それよりもだ。
「あの、お怪我は……?」
「……ポーションかけた」
ぶっきらぼうだが……うん、見たところ怪我はしていないみたいね。
「大丈夫だよ、シェリカちゃん。シェリカちゃんのポーションちらつかせたら大人しく使ったからさ」
「アセナさん……!」
アセナさんが言うなら大丈夫ね……!
「お夕飯、私も手伝ったので、楽しみにしていてくださいね」
ヘレンお姉さんたちや、奥さま方に教えてもらいながら、お手伝いをさていただいた。
王女として育った身だから、料理とは少し意外かもしれないが。しかしポーション作りで夢中になっていたら夜中で、料理人も帰ってしまったから、自分で野菜を切ってサッと炒めるくらいはやっていた。
それでもそれ以上にたくさんのことを習えたけれど。
「おぉ、シェリカちゃんの愛妻料理か~~、楽しみだね、隊長!」
あ……愛妻……っ!?アセナさんの言葉にびっくりしながら、ハッとして隊長さんを見やる。
「いや、これはみなさんに作ったもので……!」
そもそも私は嫁ぐ身である……!
隊長さんに変な嫌疑がかかったら、さすがに困る……!相手は冷酷公爵とは言え、彼らの主である……!
――――しかし隊長さんは暫く考え込むと、ふと漏らした。
「……アセナ、お前既婚者だろ……?」
「そっちじゃないから」
アセナさんの笑顔の圧に、隊長さんがちょっとだけ怯んだ気がするのは気のせいだろうか……?
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