第4章 スクープ

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「日本から比較的近いからですよ。需要はあるし、所得層も比較的高い。中国まで船で運べば、あとは鉄道で運べますから大量輸送が可能です。中古車の輸出で現地の政財界とパイプを築き、地下資源のビジネスに進出する可能性を探るべきです。この国のボトルネックは資源。これは国益につながる事業です。専門商社と組んでもいい。中古車の国内事業はどんどん先細りになります。いまどきの若者は車に乗りません。今こそ将来を見据えて経営の舵を切るべきです」。山根は力説した。  地下資源が重要であることくらい田中にも分かっている。父親の代に日本が戦争に敗れたのも石油の調達ルートを断たれたことが一因だ。世界は地下資源の利権を巡って絶えず争ってきた。今も争い続けている。素人がおいそれと手を出せるビジネスではない。 「無茶を言うな。石油や天然ガス、レアメタルは国のトップ外交でも権益獲得が難しいビジネスだ。門外漢のレガシーオートの手に負える事業ではない」  田中は提案を一蹴したが、山根は諦めない。 「策があります。事業計画もつくりました。私に任せていただければ必ず……」。山根は目をギラギラさせて田中に食い下がった。
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